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評者◆秋竜山
行列だヨおっ母さん、の巻
No.3198 ・ 2015年03月14日




■行列で有名なアリは、自分がなんの行列、あるいは目的をもって並んでいるのかわかっているのだろうか。私が考えるに、アリはとりあえず並ぼうとして列に加わるのではないかと思える。数えても途中でなげ出してしまいたくなるような数のアリである。あの一ぴき一ぴきに同じ目的意識などあるとは考えられない。彼らは、自分がなんのために行列を組んでいるか、サッパリわからないから、並んでいられるのではないかと私は思う。そういう私も、行列をみかけると、並びたくなるのである。アリの行列にではなく、人間の行列にである。その行列に加わる時、「これはなんの行列ですか?」なんて、たずねない。たずねたところで、「サァ?」とか、「私にもわからないんですよ」なんて答えがかえってくるからだ。清田予紀『錯覚の心理トリック』(三笠書房、本体五九〇円)では、〈「並んだかいがあった」というウソ〉と、いう項目があり、これがアリではなく人間であるから、身近に同感できる。
 〈オフィス街のランチタイムをウオッチングすると、行列のできている定食屋やレストランをよく見かける。ランチタイムは時間に限りがあるのに、人はなぜ行列をつくってまでその店で食べようとするのだろう。「そんなの当り前じゃないか。行列ができるほどのおいしいのをみんな食べたいからだ」と言う人もいるかもしれない。〉(本書より)
 これは当たっているだろう。
 〈社会的な動物である人間は、集団の行動と同調していると安心する傾向がある。だから行列を見かけるとつい並びたくなってしまう。〉(本書より)
 なにがすごいかって、おとなしく行列をつくるということだ。どこにも、「並べ」というような貼り紙もない。そんなものがなくても、静かに並ぶという、それが当然のごとく参加するということに私は共鳴する。これこそが、社会的な動物である人間ということになるのだ。雨がふっていたら傘をさして並ぶ。〈行列店にハズレなしだよ〉という高評価が与えられるという。まずかったら行列などできないということになるのだろう。しかし、そんなこともわからず最初は並ぶことになるのである。もし、まずかったらどーなるのか。並んだ自分が悪いのか……!! と、あきらめるのか。それとも、「ヤイ!! 長時間並んだのに、なんだこの味は、ちっともうまくないじゃないか。どーしてくれるんだ!!」。私は今までそのような場面に出くわしたことがないから、どういうことになるのかよくわからない。
 〈もし、さんざん行列して食べたものがおいしくなかった場合、「長時間並んだ」という現実と、「マズかった」という現実の2つが矛盾することになる。けれど、それでは「せっかく並んだのに」と不快になってしまう。これを心理学では「認知的不協和」という。(略)しかし「並んだ」という事実は変えられないので、「マズかった」という認知のほうを変えるしかない。そこで、「これだけ並んだのだから、おいしくないわけがない」→「おいしかった」となるのだ。〉(本書より)
 行列をつくる人間は、お人好しということなんだろうか。







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