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評者◆小嵐九八郎
人類の過去、現在、未来を解析しきった山極寿一氏のロングインタビュー ――「考える人 二〇一五年冬号」(本体一四四〇円・新潮社)
No.3198 ・ 2015年03月14日




■貧乏なもので、この十年、私大でアルバイトをしている。男子学生は年年、非野性的というか温和しくなってきている。ただし、高校時代に運動部系の部活をやっていた学生は冒険心に富んでいて、気配りもできる。女子学生は概ね、価値観の細かいところへと重心がいき、かつ“非常識”が多いと映る。ま、自らを脇に置いてあれこれ言えないが、ある情報セキュリティー会社の今年一月の調査だと、女子高校生のスマホやケータイの使用時間は「平均で一日七時間」「男子や他の学齢と比べて突出」(「東京新聞」2月10日)とあり、うーむ、ここいらに原因があるのかも知れない。直の人間と人間との手触りの情報入手が浅く、パネルの画面によっての偏ったものになっているような。
 果たして人類は、こういう事態を抱えて、どこへ行くのだろうか。そもそも、情報伝達とか価値観の一定の共有はどこからきたのだろうか。マルクスは国家や共同体の分析をかなりきちっとやったし、経済学でも価値の根っこ、利潤率の傾向的低落や失業者とか産業予備軍の分析で不滅と思うけれど、なにせ19世紀の時代をモデルとしていて、人類史そのものに遠い、というより、かなり疎い。エンゲルスの家族の起源など“群婚”が心に残るが生物学的根拠が淡く、甘過ぎる。
 この欄で書くのが少し遅れたが、700万年前あたりまで遡り、類人猿の“社会”の構成を実地で研究し、人類史を掌に入れての人類の過去、現在、未来を解析しきっているロングインタビューが出た。「考える人 冬号」で、霊長類社会生態学、人類進化論を専攻してきた山極寿一氏が「人にはどうして家族が必要なのでしょうか」というタイトルの下で話しているそれだ。俺は既に氏の『ゴリラとヒトの間』(講談社現代新書)、『暴力はどこからきたか――人間性の起源を探る』(NHKブックス)を読んできたが、差し迫っての現代の深淵、暗黒、将来について一歩踏み込んだのが今度のロングインタビューだ。震えるほどの根底からの中身だ。あ、この人、京大の新総長だって……。







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