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評者◆秋竜山
オッパイポロリは自由の象徴、の巻
No.3193 ・ 2015年02月07日




■嘘の嘘は本当。嘘といわれて怒るわけにもいかないか。木村泰司『名画は嘘をつく』(大和書房、本体七四〇円)。巨匠たちの絵の嘘だから文句をいえないか。本書のタイトルのように名画は嘘をつく。嘘のつきものだから文句をいってもどうなるものでもない。
 〈この本では、それぞれの作品に描かれている「嘘」を読み解いてみました。その結果、表面的な世界とは違う「現実」が、皆さんの前に露わになっています。絵画鑑賞は恋愛とよく似ています。一目惚れだけでは長続きしません。その人物の内面を知ることによって、愛情も深くなったり冷めたりもします。また、相手をよく知ることによって、相手のつく嘘も見抜けるようになっています。〉(本書より)
 絵画鑑賞は恋愛と同じとは、つまり、男としての恋愛は、曲者としての女性を相手にしなければならないということだ。そんな相手の嘘との戦いだ。なんて、わかったような、わからんような。本書では名画におけるさまざまな嘘をたのしむわけだ。〈第一章、タイトルの嘘~題名からは想像もできない絵の世界〉では、
 〈巨匠は「女神」を描いたわけではない《民衆を導く自由の女神》ウジェーヌ・ドラクロワ[フランス、1798~1863]1830年の7月革命をテーマに描いた壮大な作品です。(略)国旗となる三色旗を手に、人々を導いているのが自由の擬人像です。しかし、じつは正式なタイトルは《民衆を導く自由》であって『女神』はありません。彼女はフランスを象徴する「マリアンヌ」で、自由の象徴です。〉(本書より)
 「なんで、そーだったのか」と、別にガッカリする理由は一つもありません。それでも、この絵は、ちょっぴりズルイかもしれない。つまり、この絵が大受けしたものはある一カ所にあるからだ。ためしに、その一カ所だけを黒くぬりつぶしてみるとすぐわかる。「マリアンヌ」のみごとにはだけたオッパイ。本人はこれに気づかないのか、それとも、わざと自信ありげに見せびらかしているのか。この名画は、このみごとなオッパイにあるのではないだろうか。とにかく、一番最初に目につくのはそこでもある。「マリアンヌ」のオッパイを見ることのできることだけでも大変なことである。これを、たんなる助平心で決めつけてしまうべきではないだろう。サテ、そのオッパイを黒くぬりつぶしてしまったら、どーなるのか。たとえドラクロワの作品であろうとも、ただの作品になってしまうのではなかろうか。よく考えてみると、絵にあるような殺し合いをしている戦場で、ポロリとあらわれたら、男どもはまず、なにがなんだかわからなくなってしまうほどコーフンしてしまうだろう。もしかすると、ドラクロワはそんな計算のもとにこの絵を描いたのではなかろうか。自由の象徴とは、戦場における、オッパイのポロリである。なんて、男は誰でも納得するであろう。もしこの絵の中でもう一人の女が、同じようにオッパイ、ポロリの姿をしていたら、どうなるか。まったく別ものの絵画になってしまうだろう。ドラクロワがやるぶんにはいいが、この絵にそれをつけ加えたら、たんなるパロディ作品となり、だいなしにしてしまうことは間違いないだろう。







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