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評者◆秋竜山
「前むき」の婦人警察官、の巻
No.3192 ・ 2015年01月31日




■〈そう、ヌードは、裸体だが、「はだか」ではない。〉と、本書ではいう。池川玲子『ヌードと愛国』(講談社現代新書、本体八〇〇円)。そして、オビでは〈「日本」を裸にする七つの極上ミステリー〉〈ヌードで読み解く近現代史〉のコピー。そして、白黒写真がすごい(当時はカラー写真というより白黒がフツウであったからだろうか。ヌード写真であるから、今だったらカラーにきまっているだろうが、ヌードだからといって白黒だ)。
 〈ぎょっとするようなヌード写真がある。代表的な写真史本の中にもしばしば取り上げられる有名な一枚。見ればわかるように「合成」された写真だ(図5‐1)。場所は数寄屋橋を望む銀座四丁目。遠くに日劇と朝日新聞社が見える。電車と車が行きかう路上には、不鮮明ながら交通整理にあたる男性警察官の姿もみえる。手前の交通整理台の上で両手を広げた女性は後ろ向きの全裸である。作者大束は、戦前から報道写真を手掛けてきた朝日新聞社のスタッフで、日本で最初の「プレスカメラマン」を名乗った人物といわれている。婦人警察官は、事実の報道を旨とする大新聞社のカメラマンによって、なぜ制服をはぎ取られなければならなかったのか。(略)これが本章の謎である。〉(本書より)
 写真をみると、すべてなつかしさである。制作年が1948年? というから、戦後まもなくのころであり、日本人ももっとも好きな時代であり、小説やテレビドラマでその時代をやると必ず受けるという。ヌードの婦人警察官が合成写真では後ろむきになっている。なぜ、後ろむきなんだ。どうして前むきにしなかったんだ。なんて、いいっこなし。本書では〈脱がされた婦人警察官の謎〉とあるが、むしろ後姿の謎といったほうがいいかもしれない。
 〈現場での活動がどうであれ、彼女たちのイメージは、極めて華々しいものだった。私見では、婦人警察官のイメージは大きく三つに分けられる。「婦人解放」、「母性」、そして「セクシーな魅力」である。〉〈セクシーな魅力。読売新聞の記事が傑作なので抜粋してみる。「ふくよかな乳房をぴったりと紺の制服につつんだスマートな“婦人警察官”であってみればポケットには手錠の代りにコンパクトも潜んでいようし、頬をなぶるほの暖かい春の息吹きに青春のいのちが躍動もしよう。(略)若さと美しさ、そして健康を制服につつましく包んだ彼女たちの姿それ自体がいわゆる『警察』の清涼剤であり、とげとげしい街のこころを解きほぐす春告鳥である。〉(本書より)
 すばらしい文章の新聞記事である。読んでいて感動してくる。このような新聞記事を読んでみたいものだ。今の時代にもっともふさわしい記事内容ではなかろうか。戦後という時代がこのような時代であったのだろうと、想像すると、やっぱり、あの時代にあこがれる日本人の気持は正直であると、思えてくるのである。今の時代、「婦人警察官」を、まったくといっていいほど見かけない。なぜだろうか。〈ここのところ、特に女性警察官をめぐるニュースが多いと感じるのはそのせいだろうか。二〇一三(平成二十五)年には「女性初の都道府県警本長誕生」も報じられた。〉(本書より)
 お母さんのような婦人警察官を求む!! ってのは、どーか。








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