|
|
|||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||
|
||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||
|
||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||
【重要なお知らせ】お問い合わせフォーム故障中につき、直接メール(koudoku@toshoshimbun.com)かお電話にてバックナンバー・定期購読の御注文をお願い致します。 |
||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||
評者◆山本明広(BOOKアマノ有玉店)
本を愛する人に選ばれた、友情と物語の力を感じさせる作品
本屋さんのダイアナ
柚木麻子
No.3189 ・ 2015年01月10日
■二〇一四年十二月四日、静岡県内の新刊書店と図書館のすべての従業員に参加権が与えられ、その投票で選ばれる「静岡書店大賞」が発表された。六三七名の書店員、六四名の図書館員が投票に参加して選ばれた第三回の小説部門大賞受賞作が本書『本屋さんのダイアナ』だ。
題名に「本屋さん」と付いてこそいるが、書店員のお仕事物語ではない。二人の少女の友情と成長の物語である。 世界一ラッキーな女の子になるようにと名付けられた大穴(ダイアナ)。その名付け親の父は行方知れず、日本人の母は自分をティアラと呼ばせている。勤め先のキャバクラで使っている名前であるそのティアラに染められたパサパサの金髪で、キラキラしたアニメのTシャツを着た痩せっぽちの体、とがった顎に鋭く大きな目をしたダイアナは周りから好奇の目で見られることを嫌がった。一方、編集者の父と料理教室を家で開く母に育てられ、シックな装いに整った顔立ちで才色兼備、誰からも好かれる人気者の彩子。二人は小学校三年生の時に同じクラスに。 正反対と言ってもいい二人をつないだのは「本」の存在だった。図書館で表彰されるほどたくさんの本を借りて読み、そこに描かれた物語の登場人物や風景に憧れるダイアナと、そんなダイアナに一目置いていた彩子。お互いに自分にないものを持っている相手に惹かれ、友情をはぐくんでいくが、環境の変化とちょっとした勘違いから絶交してしまう。 そして、ダイアナが読んできた物語や彩子の家に重ねた家族(とりわけまだ見ぬ父)に対する理想と、何不自由ない家庭で両親から愛情をたっぷり注がれて多感な時期を女子校で過ごした彩子が抱いた、ちょっと危険な香りのする素敵な恋愛への憧れが、まるで二人に憑りついた「呪い」のようにそれぞれの運命を大きく左右する。やがて高校を出て書店員になったダイアナと、就職活動を控えた大学生の彩子、『赤毛のアン』のアンとダイアナのような「腹心の友」であった二人は本を通して再会し、本を通して真実を知り、自分の力で自分を取り戻す。 本書にはたくさんの実在する児童文学が登場する。そして、主人公がダイアナと同じ名前で、彩子の父が編集担当した『秘密の森のダイアナ』という架空の作品が大きな役割を果たす。 ダイアナや彩子と同じように、子どもの頃にたくさん本を読んでその世界へ憧れを抱いたことを思い出す読者もきっといることだろう。二人のように、現実は憧れた世界のようになってはいないかもしれないけれど、その世界が今も自分を支えてくれているという方も多いかもしれない。 「物語の力をもっと多くの人に感じてほしい」――そんな思いを込めて投票された、書店員・図書館員が選ぶ賞にふさわしいこの本を、あなたにとってのダイアナになりますようにと願いをもって送り出したい。 |
|
|||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||
取扱い書店| 企業概要| プライバシーポリシー| 利用規約 | ||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||