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評者◆伊達政保
「渋さ知らズ」の結成25周年企画――『十二夜より十三夜、または勝手にしやがれ』を上演
No.3186 ・ 2014年12月13日




■豊島区池袋の劇場あうるすぽっとで生誕450周年シェイクスピア・フェスティバルが一年にわたり行われた。その中であのフリー・ジャズ・パフォーマンス集団「渋さ知らズ」が結成25周年企画で『十二夜より十三夜、または勝手にしやがれ』を上演したのだ。渋さが何故シェイクスピアをという向きもあるが、もともと渋さは劇団「発見の会」の劇伴から出発している。以後「風煉ダンス」「ルナパーク・ミラージュ」など多くの劇団の音楽・劇伴を務めてきた。よって渋さが演劇公演を行うということに何の不思議もないのだ。
 81年「発見の会」は詩人岩田宏(小笠原豊樹の翻訳名も著名)訳『十二夜』を初演、83年には当時戒厳令下の韓国でも上演された。今回その台本を元に、川端賞作家戌井昭人(芥川賞数度落選作家でも有名)、萩原朔太郎賞詩人三角みづ紀が台詞を書き下ろし、構成脚本を上杉清文が行うという豪華版。演出には画家アーティストで劇団ポニーズを主宰する青山健一。役者陣は「発見の会」から重鎮牧口元美を始め輿石悦子、吉田京子、伊郷俊行(初演時と同役で出演)、「風煉ダンス」から林周一など、また関係する多くの役者が出演。また渋さの舞踏、ダンサー、パフォーマーも総出演(元劇団出身者が何人もいる)。美術・裏方もすべて関連演劇関係者が全面協力。音楽劇伴は当然不破大輔(初演時の杉田一夫の曲も使用)と渋さ知らズ。
 舞台は『十二夜』発表の17世紀初め、薩摩の侵略が始まる頃の琉球と設定変更されている。冒頭コロスの女性たちが歌う八重山民謡「月ぬ美しゃ」に、オイラぶっ飛んだ。月が美しいのは十三夜、女性が美しいのは十七歳、という歌詞で、この劇にピッタリだ。物語は『十二夜』そのままの展開。しかし、道化を夢野京太郎(チョンダラー)と設定し、薩摩との関係性など竹中労さんの琉球史観ではないか。劇中、南波トモコの織姫(オリビア、台詞は三角みづ紀)と玉井夕海の獅子丸(シザーリオ、台詞は岩田宏)の詩文とも言える掛け合いは素晴らしい。
 そして大団円。舞台はそこで終わらない。さすが上杉、シェイクスピアのライバル作家マーローの「メフィストフェレス」と「椿説弓張月」がゴチャ混ぜになり源為朝が出てきて、ルシファーと闘い、大悪魔は巨大な龍(渋さのライブでよく使われる風船ドラゴン)と化して、巨人アマンチュ(舞踏の若林淳似の巨大人形)と大格闘。これは凄かった。巨人は負けるがついに龍は滅ぼされ、めでたしめでたし。何と楽日は沖縄県知事選当日。舞台の最後に牧口元美と道化の渡部真一が歌う「ともかくお終いの唄」には泣かされた。







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