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評者◆山本明広(BOOKアマノ有玉店)
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“町内会”は義務ですか?――コミュニティーと自由の実践
紙屋高雪
No.3185 ・ 2014年12月06日




■アパートを契約する際に、諸経費の欄に「自治会費」という項目があることに驚いていたら、入居後にはお祭りの寄付金徴収や地域の草取りがあり、こうした行事のある週末には仕事を休めないから参加できないと思っていたら、その場合は負担金の義務があって、面倒だなあと思っていたこの頃。そんな時に目にしたのが『“町内会”は義務ですか?――コミュニティーと自由の実践』だった。本書には、二つ返事で団地の自治会に加入した著者が、自治会長の急逝に伴い会長を引き受けることになり、その仕組みと実態に驚きつつ、新たな形を提案・創造していく様が描かれている。
 まず真っ先に浮かぶのが「そもそも町内会って何をやっているの?」という疑問。ここでは町内会の主立った活動として、地域のお祭りや回覧板を通した住民への広報活動、防犯灯の設置や清掃活動、リサイクル運動などが挙げられている。さらには高齢者の見守りや生活支援、町内会で葬式を仕切ること、経済活動をするところまであるという。だが、これらは一人で声を上げることでは出来ない、地域の代表として町内会があるからこそ出来る活動であり、その観点から町内会は必要であるとしている。
 一方、一度入ったら抜けられないから関わりたくないという意見もよくある。実際に、活動による時間的拘束が負担になったり、役を受けた人が何十年も続けざるを得ない状況に追い込まれたりしているケース、行政や校区とのしがらみなどを挙げ、こうした「つながり」という社会関係資本には負の側面があることも忘れないようにと指摘されている。
 その実例として紹介された、著者が受けた校区でのつるし上げの場面は、壮絶なものだ。複数ある会議や行事のみならず、運動会では正副会長のたった二人で競技をいくつも掛け持ちするなどの現状に耐えかね、自治会での了承を得て校区の要請にこたえられないと申し出たところ、定例会で居残りを命じられ、「運動会は子どものため。あなたの都合で子どもたちを犠牲にしていいのか」「一人ずつ聞いていけば誰か一人くらい出席できる人はいるだろう」「俺のところはやっているのに、なぜおまえのところは出来ない」「ごちゃごちゃ言うな、成果を見せろ」となじられる。
 自主的な組織でありながら、地域住民全員が加入していることが前提となって運営されているため、前述のような問題が生じているのが町内会という組織の現状。しかし、本来なら町内会は基本ボランティアで地域の代表として行政への提言などの仕事を行い、必要なことは自治体に税金で賄ってもらうべきであると主張する著者が作ったのが、会費なし、義務なし、役員手当なしの新自治会。やりたいことがあればやりたいと思う人が自ら手を挙げ、賛同する人がいれば一緒に活動し、資金は寄付で集めてやればよいとしているが、実際のところは、夏祭りと餅つきを定期的にやる程度だそうだ。
 東日本大震災以来、地域の絆の重要さがより強く叫ばれていることもあるし、昔から「遠くの親戚より近くの他人」とはよく言ったもの。家族に何かあったらと思うと、こうしたコミュニティー内でのつながりは無下に出来ない。町内会って何? という人から、今現在、町内会活動を頑張っている人まで、本書に記された様々な考えを読み、知ることで、自らが住む地域のコミュニティーの一員として町内会を意識してみてはいかがだろうか。







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