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評者◆北村知之(スタンダードブックストアあべの)
アマチュアという学び
じぶんの学びの見つけ方
山崎直子ほか
No.3183 ・ 2014年11月22日
■エレベーターの中や、踏み切りにつかまったとき、目をつむってから眠るまでのあいだ、文庫のページを開くまでもないようなほんのすこしの時間に、ブックフェアを考える。
たとえば、いまは「と私本」フェアを企画している。「と私本」とは、ただ「○○と私」というタイトルの本のことで、『先生とわたし』(四方田犬彦)、『量子力学と私』(朝永振一郎)、『「暮らしの手帖」とわたし』(大橋鎮子)、『ボルヘスとわたし』(ボルヘス)、『ウィスキーと私』(竹鶴政孝)、『富士さんとわたし』(山田稔)、『安部公房とわたし』(山口果林)、『飼い喰い 三匹の豚とわたし』(内澤旬子)、『ボードレールと私』(西脇順三郎)、『星の王子とわたし』(内藤濯)など、なんぼでもある。そして「と私本」といえば、もちろん江藤淳。『アメリカと私』、『妻と私』、『犬と私』、『文学と私 戦後と私』と、「と私本」の大家だ。 それ以前は、「ごっこ本」というのを考えていて、これは読んだあとに同じことを真似てやってしまいたくなる本のことで、まあ、梶井基次郎『檸檬』だ。そのほか、高野文子『黄色い本』のあとで、『チボー家の人々』を読むとか、平野紗季子『生まれた時からアルデンテ』のあとで、お風呂でパピコを食べるとか、沢木耕太郎『深夜特急』のあとで、バックパックに出かけるとか、永井荷風『日和下駄』のあとで、町歩きをしてみるとか、これもなんぼでもある。知り合いには、星野道夫を読んで、アラスカまでいった人もいる。だいたいおもしろい本というのは、すべて「ごっこ」してみたくなるものかもしれない。日本の作家にかぎれば、「ごっこ本」の大家は、村上春樹だろうか。個人的にも、猫を飼ったり、ジャズを聴いたり、パスタを茹でたり、アイロンを練習したり、ホットケーキにコーラをかけたりしてしまった。 これはソラでどれだけの本をあげられるかという遊びなので、実際にブックフェアをやることはまずない。ちゃんと調べていないので品切れの本も多いだろうし。それでもこんなふうにただの暇つぶしに本のことを考えていると、毎日働いているうちに、いろいろな本にまつわる知識や情報のようなものがストックされていることに気がつく。そんな自分が知っていることすら知らない本の捉え方は、具体的に明日役に立つというものではないかもしれないけれど、忘れてはいけないもののように思う。 書店の仕事に慣れてくると、本に対して自分が知っていると思いこんでいる範囲の見方しかできなくなる。だからすでにあるジャンル分けをはみ出しているような本当にオリジナルな新刊などに出会うと、どの棚に置いて売ったらいいかわからない、という情けないことになってしまう。まじめにブックフェアを考えてみても、だいたいどこかで見たことのあるようなものしか思いつかない。 フィルムアート社の『じぶんの学びの見つけ方』は、いわゆる学生時代の勉強ではなく、自分の働き方・暮らし方・生き方を考えて、それを自ら作り出すことを自分の学びを見つけることと定義して、その実践のかたちを集めている。「何を、なぜ、どのように学ぶのか」という問いに、各界で活躍する26名が発言している。そのなかで夏葉社の島田潤一郎さんの「アマチュアという学び」が、とてもおもしろかった。編集経験もないままに、ただ一人で出版社を立ち上げ、アマチュアとして本を作りはじめた島田さんにとって、手がけた冊数に比例して増してしまうプロフェッショナルとしての視点や思考が、自分の仕事にとっていかに危険なものであるかが語られている。 書店で働き始めてまだ半年の同僚の仕事にはいつも驚かされる。「アマチュアという学び」に満ちていて、教えられることばかりだ。 |
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