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評者◆内山純氏インタビュー
ビリヤードのプロフェッショナルと思いきやプレー自体は一〇回程度!?――第二四回鮎川哲也賞受賞作はビリヤードと謎解きが密接に絡んだ異色作
B(ビリヤード)ハナブサへようこそ
内山純
No.3182 ・ 2014年11月15日
■第二四回鮎川哲也賞は一四〇編の応募の中から、内山純氏の『B(ビリヤード)ハナブサへようこそ』に決まった。女性の受賞は、岸田るり子氏の『密室の鎮魂歌』以来、一〇年ぶり。好きな作品はアイザック・アシモフの『黒後家蜘蛛の会』という内山氏が執筆を始めたのは、まだ六年前のこと。生活環境が変わったときに、「これから先何もなく終わるのもつまらないなと思って、一人でどこででもできる趣味を持とう」と思ったのがきっかけ。受賞の知らせを聞いた瞬間は、「『えっ?』という感じで、気が抜けましたね」と振り返る。
「携帯に電話をいただいたのですが、仕事中で出られませんでした。知らない番号でしたので『あれっ?』と思ったのですが、そういえばそろそろ決まるころ……。『またご連絡します』と留守番電話が入っていました。以前、別の賞で最終選考まで残ったことがあり、そのときは『落ちました』という連絡だったので、またそれかなと。となると担当者も改めて連絡しにくいだろうと思って、こちらからかけてしまいました」 鮎川哲也賞は、本格ミステリ作家を目指す者にとって、喉から手が出るほど欲しい賞。しかし応募の経緯を聞くと、意外な答えが返ってきた。 「過去にほかのミステリ関係の賞に応募したときもそうなのですが、どういう賞なのか細かいことはあまりチェックしないんですよ。鮎川哲也賞についても同じで、よく読んでいた鮎川さんの賞ということ、そして本格ミステリ作品が対象ということを知っていた程度でして。実は、ちょうど書いていた作品が締め切りに間に合いそうだなと思ったから応募したんです。非常に無謀。申し訳ないくらい何も考えていなかった。すみません」と苦笑い。 とはいえ全四話で構成された作品は、ビリヤードのネタと謎解きが密接にリンクした出色の出来映え。物語の中でビリヤードの基礎については記述されているので、読むに当たって予備知識は全く不要。しかもその記述が適度なボリュームでリーダビリティを損なうこともない。どれほどの手練れなのかと思いきや、「ビリヤードはほとんどできません」とこれまた意外すぎる返答。 「ゲームをしたことも一〇回程度。夫の趣味なんです。夫とビリヤード愛好家が話をする場所にはたくさん顔を出していまして、居酒屋で延々とビリヤードの話をしているんですよ。『バンキング』『スクラッチ』『テケテケ』『マスワリ』(いずれも章タイトル)という訳の分からない言葉が飛び交い、熱く語り合っている……。新しい作品を書く際に、言葉自体がミステリなのでこれは面白いと思いました。そのためビリヤードのことについては夫が完全に〝監修〟しています」と裏話を披露。 探偵役はビリヤード場の学生アルバイターである中央(あたり・あきら)、そしてビリヤード場のオーナーは英雄一郎(はなぶさ・ゆういちろう)。共通項は共に正しく読まれないことが多いという名前の珍しさだ。 「主人公が語り手なので、語り手の名前は説明がしにくい。何頁も読んでいて、語り手の名前が分からなかったり、出てきていても普通の名前だと忘れられたり。だから一発で覚えてもらえる名前にしようと思っていました。英雄一郎のほうは実は当初、割と普通の名前だったのですが、第四話『マスワリ』で頭文字に『H』の付く人じゃないといけないとなって、それでハナブサってかっこいいなと思ったので」 その中央の会話の処理が面白い。彼の台詞の冒頭はすべて二倍ダーシが引かれているのだ。 「中君は常に傍観者。ビリヤードそのものには熱くならないけれども、ビリヤードをしている人たちには興味がある。そこで会話が必要になったとき普通にカギ括弧で処理してしまうと、その微妙に引いた感じがうまく出せないと思った。そこであえて二倍ダーシを使いました」 登場人物の名前もさることながら、ビリヤード場に集う常連客たちのキャラ設定が〝立っている〟のも読みどころの一つだ。 「初めに夫に読んでもらったら、『登場人物にもっと個性がないとつまらない。誰の台詞だかよく分からない』と指摘されました。それでキャラクターの色づけを濃くしようと思いました。例えば『ご隠居』は商社マンだからアラブには行っていただろうとか、物語と全然関係ない設定は、書きながら途中でどんどん増えていきました」 読了後、誰もが思うに違いないこと。それはこのキャラを使った続編への期待だ。「全四話でビリヤードゲームが一区切りするように描いたので、続編は正直全く考えていませんでした。もしそれなりにご好評をいただけたら、そのとき考えます」とにっこり。「ビリヤードという特異なものを扱っているのですが、若い方から見ると古いものに映るかもしれない。そのレトロ感を新鮮に感じてもらいたいし、私と同年代以上の方々には懐かしさを感じてもらえればと思います」と話した。 |
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