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評者◆ベイベー関根
進撃の虫! 猿! 植物!――その他の得体の知れない生き物!
まちあわせ
田中雄一作品集
No.3180 ・ 2014年11月01日




■いわくいいがたいグロテスクなフォルムをもった巨大な生物が、人間の居住圏に襲いかかる! 必死に抵抗する人間たち! しかし、その圧倒的な暴力の前に、人間たちの生活は崩壊し、しだいに劣勢に追いやられてゆく……。
 といっても、『進撃の巨人』じゃない。それに先がけて『進撃の巨人』っぽいマンガを描いてきた田中雄一の作品集『まちあわせ』だ! でも、あんまりアレと比較するのも本人がイヤがるだろうから、しばらくその話はヌキで進めとこう!
 2009年に発表された短篇「害虫駆除局」でフィーチュアされるのは、汚染物質の影響で生まれた十二脚虫(じゅうにきゃくちゅう)。巨大、強力、おまけに凶暴なその虫たちは世界各地で大量に発生するようになり、ついには日本にもその姿を現わす。この虫たちは人間の身体を苗床に幼虫を育てる危険きわまりないシロモノで、その駆除のため、害虫駆除局が設立される。駆除局員ながら十二脚虫に惹かれるものを感じる小野崎は虫との共存を夢み、一方、十二脚虫に妻を連れ去られた上司の長沼は虫の絶滅に闘志を燃やす。ある日の任務で、長沼の妻が生存状態で発見され、逆に小野崎は十二脚虫に捕まり、苗床にされてしまう。小野崎は長沼率いる部隊の手で救出されるが、療養期間を経て仕事に復帰しようとする彼に、妻は長沼が駆除局を辞めたことを告げる。理由は妻の介護のためだという。一匹残らず十二脚虫を駆除するということばは嘘だったのか、と詰め寄る小野崎だが、長沼の決意は固い。そして、マンションに戻る小野崎をショッキングな情景が待っていた……。
 基本的に収録されている作品四篇は、どれも虫とか猿とか植物とか巨獣とか(最後の巨獣が出てくる作品なんかは「箱庭の巨獣」というタイトルをつけられてて、気の毒というほかなし)人類が強大な何ものかに侵略されつつあるという設定で、その上に、人の思いなど現実の前には簡単に踏みにじられてしまうという物語や、ロマンティックなラヴストーリーが紡がれていくという趣向。世界観・人間観は『進撃の巨人』に比べるとややオトナ(苦笑)。絵は難ありなところもあるけれど、この話を描きたいんだという熱意がそれを押し切ってるという感じかな(そこも『進撃の巨人』みたいだが)。ただ、そのやむにやまれなさが、どうしても共同体を守ること、家族を守ることに直結してしまうらしく、そこはおっさんとしては興味深い、といっとくか。
 家族といえば、最近友だちがドイツ人の素敵で可愛い奥さんをもらったので、すごく似た設定のCarolin Echhardt(カロリン・エックハルト)『奥さまGuten Tag(グーテンターク)!』を読んでみた。要はドイツ人の素敵で可愛い奥さんと日本人のダンナさんの新婚生活を描いた異文化交流もので、楽しいんだけど、あまりにまぶしすぎて(というか羨ましすぎて)全然通して読めねーよ! ともあれ結婚おめでとう!







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