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評者◆ぽんきち
孤立でなく自立して暮らすためのヒント
老後はひとり暮らしが幸せ
辻川覚志
No.3180 ・ 2014年11月01日




■現役時代から引退して老後へ。体力的にも衰えが出てくる中、老後をどのように暮らすのがよいのか、ちょっと考えてみませんか、という本です。
 タイトルは、著者らが行ったアンケート結果から、家族と同居している人よりも独居の人の方が満足度が高かったことによります。著者は大阪府門真市で耳鼻咽喉科を開業している医師で、著者の診療所を受診した人と、電話で健康に関する情報をやり取りした人を対象に、独居か同居か、年齢・性別・満足度・悩みの程度等の聞き取りを行いました。総計484人。ひとり暮らしの方が満足度が高い傾向には男女差はなく、年代的には90代未満で、また健康状態が悪いという人を除いて、一貫してこうした傾向があったとのことです。
 母数が十分なのか、特に細かく場合分けしたときに有意差があるのか、それ以前に満足度という主観的な尺度をざっくりとひとしなみに扱ってよいのか(数値にして意味があるのか)、というあたりは気になるところです。そのあたりは少し差し引きつつも、個人的に収穫だと思ったのは、さまざまな人の日々の暮らしに関する具体的な事例と、著者の医学的なアドバイスです。
 個々の人がどういったときにストレスを感じるか、つらいと思うのはどういう状況か、という事例から、ではどうしたら改善できるかなと考えてみたり、自分ならどうするかなと思ったり。
 事例を追っていく中で導き出されるアドバイスがいくつか挙げられています。炊事を自分で続けるとか、新聞を音読するとか、朝は一定の時間に起床して日光を浴びるようにするとか、仕事や趣味を可能な範囲で続けるといったあたりは、比較的実行しやすいですし、ひとりであろうと家族がいようと、実践してよいことだと言えるでしょう。
 老後、誰かと暮らすのか、ひとりで暮らすのか、それぞれの人のそれまでの生き方や家族関係によるわけで、実際に選択が可能なのか、その時になってみなければわからないところもあるかと思います。
 最終的には、ひとり暮らしであれ、同居で暮らすのであれ、自分でできることは自分でやり、誰かに寄りかかりすぎず、日々のリズムをつくり、といったあたりがポイントになりそうです。当たり前のことではありますが、まぁ当たり前を貫くのが難しいということかもしれません。助けを借りつつも精神的には自立を目指すというところでしょうか。読み方によって、さまざまな世代の人に、老後の生き方について考えるヒントを提供してくれる本だと思います。
選評:書評は小・中学校的な「感想文」ではありませんが、書評者の「感想」や「心情」(それに読者が同意するかしないかはさておき)が伝わってこないと、短い書評でもなかなか読むのに苦労したりします。今回のぽんきちさんのレビューは、本の内容の要約をし、感想を述べるなど、短い字数でよくまとめていると言えます。

次選レビュアー:hacker〈『ドクター・ラット』(河出書房新社)〉、夏の雨〈『弔辞の実例事典』(実務教育出版)〉







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