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評者◆添田馨
“朝日国賊論”の裏側にあるもの――薄汚れた国(4)
No.3179 ・ 2014年10月18日
■現実に存在している歴史問題を根本から解決しようとするのではなく、無かったこととして問題の所在そのものを闇に葬るため、それを何か別の問題にすり替えてしまうやり方は、欺瞞的な集合意思がもっとも得意とする常套手段である。
いま朝日新聞に対する各方面からの執拗なバッシングが展開されているが、とりわけ1982年の従軍慰安婦(吉田証言)の記事内容が虚偽だったことをめぐる同社への批判の論調に、私はどこかそぐわない感じをずっと抱いてきた。というのは批判の中身が、当時の取材方法や事実誤認についてよりも、朝日新聞の間違った記事が慰安婦の問題をここまで大きくし、その結果、わが国の名誉を傷つけ国益を著しく毀損する結果につながった、その元凶が朝日新聞だといった“朝日国賊論”のほうに大きく傾いているからだ。だがこれは別の問題への論理のすり替えではないのか? こうしたことは決して偶然には起こらない。必ずそこには共謀する不作為の意志というものが働いていると見なければならないだろう。つまり朝日新聞の報道姿勢に対して根強い反感をもつ者たちの集合意思が、ここにきて一気に噴き出しているわけだ。しかし何より許しがたいのは、これら一連の事態を渡りに舟とばかりに政治利用する動きが政府内においても顕著に見られることである。9月14日NHKのTV番組で安倍総理が「(朝日は)世界に向かって取り消していくことが求められている」と発言したことなどは、その最たるものだ。 ふざけるな、とはまさにこういう態度を指していうセリフだろう。世の威勢を買って妄言を並べ立てる反動メディアならいざ知らず、すでに手がつけられないほど拗れてしまった外交問題を、総理就任以降、自らの手でさらに悪化させておきながら、その責任の全部がまるで朝日新聞の虚偽報道にあるかのような物言いは、果たして一国の総理として真に相応しいものなのだろうか、私は大いに疑問である。 (続く) |
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