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評者◆ベイベー関根
パンがないなら、マンガを読めばいいじゃない。
パンの漫画
堀道広
No.3174 ・ 2014年09月13日




■しばらく前に、マンガをまったく読まないと公言していた菊地成孔がラジオで、久しぶりにマンガを読んだら、すごい面白かった、それは堀道広の『耳かき仕事人サミュエル』だ、といってたので、やるなキクチ! と唸らされたなー。
 この作者の堀さんってのはもともと晩期『ガロ』出身で、『青春うるはし!うるし部』とか『部屋干しぺっとり君』といった、パッと見には小学生の落書きかと思うようなタッチで、劇画のパロディのような真面目なんだかふざけてんだかまったくわからないストーリーが展開される、なんとも説明しずらいマンガを描き続けている人なのだ。本職はうるし職人らしいのだが……まあ、さしあたりそれはどうでもいーか。
 問題は今回取り上げる『パンの漫画』な。さっき『サミュエル』とか『ぺっとり君』の話をしたのに、なぜ『パンの漫画』かといえば、それは前回取り上げたのがpanpanyaさんの作品だったからだ! はい、ウソで~す。
 この作品、もともと「パンラボ」ってサイトで連載されてたもんなんだけど、パン好きの、ただしイヤミにならない程度にほどほどのパン好きである堀夫妻のパンをめぐる日常のあれこれ、及びパンから膨らんだ(パンだけに)くさぐさの妄想四コマ、いずれもパン好きの人ならおおむねうなずきまくりの内容なのだ!
 この完全にどうかしてるタッチと描かれてる普通の人としての暮らしぶり(そうでないのもたくさんまじってるけど)のギャップがなんかよくてねえ。それと、考えてやってんだか天然なんだかわからないトボけ具合もおなかにたまらなくていい感じ。それが100篇たまって、追加の書き下ろしを加えて一冊にまとまったわけで、よかったよかった。
 マンガの横についてる一行情報、じゃなくて即興セッションていうのか、これは「パンラボ」の中の人が書いてんだけど、これもまた酸味だか辛みだかのいいアクセントになってるね。個人的にツボだったのは、「パン屋の修行では『パンの気持ちになって考えろ』『パンと会話しろ』と教えられる」ってやつ。
 あとさ、この本、四コマに合わせて判型が細長いんだけど、帯にはぶっとくて茶色いクラフト紙が巻いてあるのな。
 これ、パンだね! パンの茶色い皮の中から白い中身が顔を出す、という仕掛けと見たね! さらに、カバーを外すと表紙にはぽわぽわしたマルがいっぱい描いてあるんだけど、ズバリ気泡だね! しかもふつうのページの外側も茶色(カラーでないページは茶色一色なんだけど)で縁どってあって、それも本作りのコンセプトを補強してんね。
 そんな具合で、パン好きが作った媒体に載った、パン好きのマンガ家が描いた作品を、パン好きのデザイナーが装丁した、パン好きの読者のための幸せなマンガ本なわけだった!
 ちなみに作者の堀さんは、しばらく前のレーシック手術裁判の原告だったことでも有名だ!







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