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評者◆秋竜山
戦前、戦中、戦後。……今は?、の巻
No.3172 ・ 2014年08月30日




■戦前、戦後といえば、あの戦争の前と後のわけかただ。もしかすると、日本人の一番好きなわけかたかもしれない。なにかにつけて、戦前、戦後である。間に戦中などといったりもする。思い出すのもつらい時代も、今やなつかしくもある時代となってしまった。戦争は絶対にいけない!! と、いうものの、なつかしく涙するものもあったりする。ときには「あの時代はよかったなァ!!」なんて人もいるから、なんともいえないようだ。テレビドラマで、戦中戦後がはいると、とたんに視聴力があがるという。私は昭和の戦前時代をしらないが、戦後の子供時代がなつかしくもある。♪こーんな女に誰がしたァー。なんて歌を声を出してうたったりした。子供だから、その歌詞の意味なんてわからなかった。戦前戦後と二つにわける時代に生きてきた人たちも、だんだん年老いて、その内に誰もいなくなってしまうだろう。そんな時代の日本って、きっとさびしくなるだろう。
 岩村暢子『日本人には二種類いる――1960年の断層』(新潮新書、本体七二〇円)での二種類とは、戦前、戦後ではなく、一九六〇年の断層として、「1960年以降に生まれた人」と「50年代までに生まれた人」というとらえかたをしている。そのわけかたを〈派〉ではなく〈型〉としている。
 〈女性たちの家事は、50年代とは比べ物にならないほど楽になっていく、そして「60年型」の子供たちには、七輪やかまどに火を熾したり、井戸やポンプで水を汲むことを日常体験とした人が、ほとんどいなくなるのである。〉(本書より)
 本書に、「ちゃぶ台」の活字があらわれると、あの頃の家庭生活の記憶がグッとなつかしくせまってくるものになる。「そーだ。ちゃぶ台というものがあったよなァ……」と、つぶやく。我が家にも古いちゃぶ台があった。
 〈「ちゃぶ台」の衰退も、60年代に進む。(略)中でも60年以降生まれの子供をもつ若い親たちは、“ダイニングテーブル”への憧れや指向も高かったから、それよりも早い時期にちゃぶ台からテーブルへ移行した家庭が多かったと考えられる。だからその子供たちは、幼いころからテーブルで食事するようになった第一世代に違いない。私の調査でも、「60年型」にちゃぶ台で食事をしていたことを記憶する人はあまりいない。〉(本書より)
 ちゃぶ台のすぐそばに、いろりがあった。まだテレビなどなかった。ラジオの時代であった。以前、人気の連続テレビ番組で、一話に一度は親父がおこって、家族の食事中に決まってちゃぶ台をひっくりかえした。番組の中で一番うけたのではないだろうか。他人の家のちゃぶ台がえしは、じつにたのしく笑えてしまう。もし、自分の家でそのような事態が発生したら、食事どころではなく、家中が不ゆかいな雰囲気になってしまうだろう。我が家では一度もそのようなことはなかった。親父はひっくりかえしたくなる時もあっただろうが、ガマンしたのだろうか。ちゃぶ台がえしは、親父だけの特権であり、親父以外のものがやったら、それこそ家庭の悲劇となるだろう。そして、私の親父時代には、ちゃぶ台の姿は消えていた。







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