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評者◆伊達政保
1969年を見直すための本が出た――大木晴子+鈴木一誌編著『1969――新宿西口地下広場 DVD付』(本体三二〇〇円・新宿書房)
No.3171 ・ 2014年08月16日




■1969(昭和44)年から45年経ち、69年を見直すための本が出た。大木晴子+鈴木一誌編著『1969――新宿西口地下広場』(新宿書房)、幻のドキュメンタリー映画『’69春~秋 地下広場』(大内田圭弥監督)のDVD付だ。69年の5月から7月まで、新宿駅西口地下広場で毎週土曜フォークゲリラの集会が行われ、ついには七千人のデモ隊となって地上へ噴出していった。警察は地下「広場」を地下「通路」と名称変更し、集会を禁止した。本書はその当事者へのインタビューと関係者の文章などで構成されていて、時代の重要な資料となっている。また大木さん達は現在も西口で表現活動を継続している。
 オイラ当時、大学に入学したばかり。新宿は御茶ノ水の中央大学への通学経路だった。地下広場の初めの頃は、小規模のフォーク集会、各大学や各団体のカンパや署名活動、そしてあちこちで討論が行われているという、まさに「広場」の状態だった。東大をまね、闘争中の各大学は機動隊導入、ロック・アウトにより学生をキャンパスから追い出し、4・28沖繩デー闘争の前後からその傾向がより強まった。そうした学生の一部は、西口地下広場のフォーク集会に集まり始めていた。オイラの大学はなぜか半ロック・アウト状態、同期の「ベ平連」の奴から地下広場の機動隊排除を聞き、彼らの誘いもあって翌週5月24日の集会には皆で語らって参加した。以後毎週参加。6月14日は六千人以上の大集会となり、翌日は日比谷公園で反安保の五万人集会。ベ平連の連中はデモ慣れしていて、オイラ達と全都全共闘30列隊列の最先頭、横に渡した太い青竹がボキボキ折れた。
 この辺りからオイラと本書と認識のずれが生じ始める。フォークゲリラは地下広場集会を自分達の集会という認識にあるようだが、オイラも含めた多くの参加者は、フォークゲリラを触媒とした反安保集会と考えていたように思う。地下広場を追われたフォークゲリラが岡林などのフォークを批判していくのも、自分達のフォークの方が正しいという、ある意味でセクト的認識に陥ってしまったからではないのか。この辺りは当時、竹中労さんが「流砂の音楽革命」という文章で批判していた。また本書には何故か肝心な当事者が書いていない。文中多数引用されている、70年出版の『フォークゲリラとは何者か』の編著者である吉岡忍だ。DVD化された映画は大学時代に見ていた。今見ると「広場」を潰され、11月の佐藤訪米阻止闘争に向かうという69年の状況がそこにあった。最後に鈴木一誌の69年論、宙づりの思想という設定は面白い。しかし、文化の各ジャンルが完成、成立するのも69年なのだ。








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