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評者◆第二回 『大人1年生』を始めよう! 郷土と自分自身を再発見する、古文書の魅力 柏書房・富澤凡子社長
地域の歴史を繋いでいくためにも、図書館、書店、出版社は連携すべき――インターネットでは味わえない現実の極みがそこにある
No.3166 ・ 2014年07月12日
■「出版社と図書館をつなぐシリーズ」の第2回が6月22日、海老名市立中央図書館で開かれた。主催は同図書館、企画は図書館流通ンセンター。今回は古文書関連書や人文書などの専門書を中心に出版活動を行う柏書房の富澤凡子社長が、「『大人一年生』を始めよう! 郷土と自分自身を再発見する、古文書の魅力」と題して講演。同社が書店などで古文書講座を開催してきた経験をもとに、図書館と書店、出版社が連携して地域の歴史を繋いでいくことの必要性を訴えた。
さらに、定年退職後のライフスタイルを模索する人たちの多くが本に関心をもち、居住する地域と密接に関わり新しい自分を再発見しようとしていると指摘。古文書講座がそうした人々を繋ぐ役割を果たす一例であるとし、図書館は多くの人たちが集うことができる〝場〟を提供することが重要と提案した。昨今、リアルでしか味わえない〝空間づくり〟が求められる図書館や書店へのヒントが散りばめられた講演となった。 講演後は『手がかりをつかもう! 古文書くずし文字』など古文書関連書を多数上梓している油井宏子氏による「ミニ古文書講座」も開かれた。講演要旨は次の通り。 ■大切なのは“売る”こと編集から営業職に転身 私は編集者になるために、まずは流通業の中の出版部を目指し、パルコ出版に入社した。6年近く在籍したが、自分の考えと会社の方針がずれてしまい、退職することになった。そこから、出版社を2社受けて、やっと受かったのが柏書房だった。6年編集として在職したが、一つの不満が芽生えた。それまでの出版社の中で物足りなかったのが、営業の力。面白ければ売れる、内容が良ければ売れると営業は言うが、大切なのは「売れる」ではなくて「売る」ことなのではないか。そこで一人でも多くの人に本が行き渡るダイナミズムに身を投じたいと考え、柏書房を退職した。 その後、ゲーム攻略本のアスペクト、医学書と絵本の西村書店、啓蒙書・ビジネス書の三五館、著者との共同出版の文芸社と気付けば4社を営業職で渡り歩いていた。あちこちの出版社で暴れまわっている(笑)と耳にした当時の柏書房の会長から「戻ってきて、営業に力を注いでほしい」と連絡をもらって、柏書房に。 柏書房は1970年12月の設立。社長は自分で6代目。最初は古文書関連本と歴史の本が中心だったが、今は翻訳、文芸、実用書など様々な書籍を刊行している。出版社のカラーをつくらない、というのが自分の方針。ただ、色んな出版社を経験し、今、社長という立場にあって、ようやくどんな本をつくっていかなくてはいけないのかというのが見えてきた気がする。 ■現役世代は読書を諦めリタイア後は“場”求める 本日はテーマでもある「大人一年生」を始めるための拠点として、図書館に訪れてもらいたいと願い、弊社が8年間続けている古文書講座について述べたい。 2005年秋、出版社と書店の会合が九州で開かれた。そのとき100年以上続く久留米の菊竹金文堂の都渡正道社長から「サイン会や講演会は一過性で終わってしまう。それではダメ。一つの場所で皆一緒に勉強することが大事だと思う。古文書でそれをやってもらえないか」と提案された。これをきっかけに06年2月、九州を皮切りに古文書講座がスタートした。 その第1回はスーパーの中の書店だった。店内アナウンスや軽妙な音楽が流れる中、何とか講座を開いた。参加される人の中心は60代~70代。一言一句聞き漏らすまいと必死の様子が伝わってくる。アンケートには短い時間の中で手紙のように長いメッセージを書き添える人もいる。ご自身の内側から湧き上がってくる、この言葉は一体誰に向けられているのか。講師の方だけではなく、書店や出版社に対する期待や欲求の表れではないのか。 カルチャースクールなどの講座と異なるのは、「徹底的に楽しもう」というテーマを打ち出していること。すると、内容のレベルにかかわらず、ベテランも初心者もどんどん盛り上がっていく。まさに、人と人が繋がる瞬間、インターネットでは味わうことができない現実の極みがそこにある。参加すること、実体験のすごさを感じる。もっと仲間がほしいとその〝場〟を求める人がこれほど全国にたくさんいるんだとそのときに初めて知った。 会社勤めの現役世代は本を読む時間が意外とない。古文書講座に参加される方も、前職が医者や弁護士だった人が結構いる。共通しているのは仕事が忙しかったということ。実は読書をすることを諦めていた人が多い。 仕事人生、子育て人生の次の行き先はどこなのか。新聞を例に挙げると、これまでは仕事に応じて、関心は政治や経済など様々。リタイア後、子育て終了後は圧倒的に県版・地方版の情報欄を読むようになる。地域の行政が何を提供してくれるのか、近くでどんなイベントが行われているのか、などなど。これまで会社や子育てを通して世間と関わっていたが、その後はむき出しの個人になる。自分らしさや生き甲斐を、その人自身が住まう地域や地元に求めるようになる。つまりは、地域を再発見していくことに楽しさを見出す。そして、地域と関わる新しい自分自身を再発見する。その一歩が「大人一年生」の歩みだと思っている。 ■本をたくさん揃えて多くの人の居場所に そのために、図書館にお願いしているのは、ベストセラーでリピーターを増やすのではなく、本をたくさん揃えて多くの人たちの居場所をつくってほしいということ。もっと前に進みたい、もっと深く掘り起こしたい、利用者のそういう気持ちに応えられる場所、そういう魅力ある図書館に私たちは協力していきたい。 岩手県のある郷土史サークルでリーダーを務める70代の男性がこんなことを言っていた。「例え、3人でも5人でも仲間がいるっていうのは力の源になる。(中略)仲間が一人二人と病気になったり、亡くなったりして、気がつくと地域で郷土史を勉強する仲間がいなくなっている。一人では何の気力も沸かない。(中略)でも、僕の今の楽しみは本屋に行くこと。棚の前に立つと、まだまだ読まなくてはいけない本がたくさんあるので安心する。たくさんの本から自分が必要とされているように思える」。 私はこの言葉を忘れられない。「一人でも孤独な人を救いたい」。これは、私どもと油井宏子さんが確認しあった信念でもある。 大事なことは、図書館、書店、出版社が、どう連携し、どう循環しながら、地域の歴史をきちんと繋いでいくのかということ。それにはまず、「大人一年生」になって、もう一度、〝出版社が本を出す〟という行為を理解してもらいたい。 |
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