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評者◆秋竜山
映画の「まわし観」はできない、の巻
No.3166 ・ 2014年07月12日




■映画黄金時代といったらいつの時代なのか。映画に活気がみなぎっていた時代ということになるだろう。そんなことを考えながら、子供時代に観た映画のことなど思った。私は映画少年ではなかった。むしろ漫画少年というべきだろう。村へ月一回の巡回映画がやってきた。昭和二十年代後半である。この時代は巡回映画とか、貸本漫画とか、そして、子供漫画の月刊雑誌が一番多く出版されていたのではないだろうか。友達同士が誰かしら一冊は定期的に買っていた。誰々は、おもしろブックとか、誰々は、冒険王とか、漫画王とか、少年画報とか、少年クラブとか、少年とか、数え切れないくらいの漫画雑誌が月一回の発売日には本屋に並べられた。それを、みんなで順番にまわし読みした。まともに表紙のついている雑誌は一冊もなかった。それでも、なんという漫画誌であるか連載されている漫画ですぐわかった。当時の子供仲間でのまわし読み文化とでもいえるだろう。漫画雑誌にくらべると、巡回映画は、その月は親に映画賃をもらえないとみのがすことになる。雑誌のまわし読みとくらべ、映画の場合は、まわし観というわけにはいかない。そんなこともあってか、子供時代は、新聞の夕刊欄の映画広告を眺めては、観たい心をおさえたものであった。封切りの映画広告を切り取ったりしてノートにはったりした。
 黒澤和子編『黒澤明が選んだ100本の映画』(文春新書、本体七八〇円)では、巨匠・黒澤明が生前選んだ100本の映画が時代順にのっている。
 〈父が話すことは毎日映画の話ばかり、家中が「黒澤映画のために」という目的で稼働しているそのなかにありながら、当初は父も娘を映画界に入れる気はさらさらなく、娘も映画界に入るなんて想像することは皆無に育った。(略)世の中では「権威的、堅物」と父を見る節もあるようだが、本当は子どもがそのまま大きくなったような、素直で無邪気な可愛い人であった。〉(本書、あとがきより)
 当時巡回映画には、黒澤明の映画がやってこなかった。村の神社の境内とか広場とかに、むしろを敷いて夜空の星をながめながら観る村人たちの娯楽映画としては、黒澤作品は、これを子供たちが観てわかるだろうか? なんて、ことから巡回映画向きではないとされたのだろうか。外国映画もはいっていなかった。美空ひばりの子役時代のものとか、三益愛子の母もので涙を流せるものが大受けであった。本書の黒澤明監督全30作品紹介の中に、〈「隠し砦の三悪人(58)、三船敏郎/千秋実/藤原釜足、軍資金と姫とともに隠し砦から脱出を図る侍と二人の百姓の物語。〉(本書より)を巡回映画で観た。黒澤作品が巡回映画にやってきた!! 記憶としては、上原美佐(?)というこの映画一回切りの出演という新人女優が印象的であった。なぜ、一回で映画女優をやめてしまったのか、よくわからなかった(今でもわからないけど)。まだテレビなどというもののない時代で、ニュースといったら新聞と映画のニュース映画であった。何年も前の古いニュースであったが、映画で観ると、新聞より新しいニュースのように思えた。映画がめずらしいせいだったのだろう。







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