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評者◆ベイベー関根
見たことあるようなないような「日常」と妄想の途中に。
蟹に誘われて
panpanya
No.3165 ・ 2014年07月05日
■よくあるじゃん、「日常系」とかいわれるマンガがさ。あれどうなの? とか聞かれたりもするんだけど、実は全然好きじゃないんだよねー。いや、読むとなかなかよくできてんなーとか思うんだけどさー、好きか嫌いかというと全然好きじゃないのな。
なんでかというと、たぶんひとつには風景が結局は写真から起こしてるだけでしょっていうのと、もひとつ、細部までペカペカしてて、影の部分とか認識できないとこになかなか入っていかないせいだろうなー。 んで、こないだ本屋で、panpanya『足摺り水族館』っていうマンガを見つけて、試しに買ってみたら、これが超面白くてさ。やっべー、ここで取り上げなきゃ! と書く順番を待っていたら、なんか次の本が出るって話を聞いて、ほんじゃそれが出たらやるかと思ってて、待つこと数ヶ月、ついに出た! のが今回の『蟹に誘われて』だ! で、なんで「日常系」を前ふりにもってきたかというと、これもある意味「日常系」かなーと思うからなんだけど、このpanpanyaさんの作品、この簡単な線で描かれた、というかイタズラ描きっぽい人がヘンな日常に迷い込んでしまうっちゅう話が多いんだよ。 だけど、もちろんそう簡単にまとめられるもんじゃなくて、この「日常」、そうとうヘンで、読むことすらできない名前のおもちゃが出てきたり、椰子の実を棒で割るだけというありえない仕事をやるための工場とか、まあ要は夢の中の「日常」とでもいうべきか。 なんだよ、そんなら逆柱いみりがいるじゃない、という話になりそうだろ? ところが逆柱さんともまたちょっと違ってるんだな。いつ果てるとも知れぬ想像力の迷宮を延々とたどっていく逆柱世界とは違って、panpanya世界はどこか見たことがあるようなものとそうでもないようなものとが接合されていて、さらにその世界が、なんとも知れず全体にもやもやしているわけね!(笑) しかも、このもやもや具合がまた、コマによってどんどん変わっていく。この描き分けがなかなかに見事で、感心しちまったぜー。 お話としては、道ばたで見つけたカニを追っていったら持ち主というか売り主が現れたとか、降り間違えた駅でどこだかわかんなくなっちゃって恐ろしい目に遭うとか、夜道を車で走っていたらこいのぼりがたくさん風の中を泳いでいたとか、明日の休みに備えて散歩の下見をしていたら曜日を間違えたとか、そんなんなんだけど、まあ明らかにこのマンガの面白さは筋の面白さとはちょっと違うところにあるわな……。 ところで、『蟹に誘われて』では、作者の短いエッセイがところどころに挿まれてるんだけど、これがまた妙にうまいんだよ!(苦笑) 『足摺り水族館』でも紀行文ぽい文章をものしていて、こちらもなかなか読ませるので、当然こちらもオススメだ! いずれにしても、そうとうの使い手と見たが、この人、何者なんだろうなあ。 |
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