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評者◆秋竜山
過ぎ去りし昭和の柱時計の音、の巻
No.3164 ・ 2014年06月28日




■安田正美『1秒って誰が決めるの?――日時計から光格子時計まで』(ちくまプリマ―新書、本体七八〇円)では、最後の〈おわりに〉のページになつかしい一文があった。
 〈物心がつき始めた1970年代終わり頃、家の柱時計のぜんまいを巻くのが私の仕事でした。〉(本書より)
 柱時計は、ぜんまいが切れる頃になると、「ギリ、ギリ」と、音を立てて巻いたものであった。本書では〈1970年代終わり頃〉と、あるが、私の記憶の想い出は、もうちょっと早く、1940年代の後半から1950年にかけての頃であった。私の子供時代でもあった。父親が踏み台の上に乗って巻いていた。どこの家庭にも同じような型をした柱時計があった。一時間置きに、「ボーン、ボーン」と、音を出して時刻を告げた。振り子の音がコチ、コチと音をたてていた。昼などはまわりの音で消されていたが深夜になると、かなりの音として部屋中に響いた。寝苦しい夜などは、ふとんの中でその音を聞いていたものだった。母が病気した時、その音でねむれないといって振り子をとめた。時計がとまるということは、時間がとまるということであり、こんなにも静じゃくであるのか、ちょっと怖かったりもした。毎年、同じ時季になると、街からいつもの時計屋さんがやってきて、村中の家を一軒一軒まわって時計に油をさしたりぜんまいを巻いたりした。ほこりを払われて、ピカピカになった柱時計は、いきかえったように動いているようにみえた。それにしても、あの「ボーン、ボーン」という音は、もしかすると、過ぎ去りし昭和の音であったようにも思われる。「いや、あれは大正時代の音だよ」、とか、「明治時代の音だよ」などと、その時代に生きた人たちによって異なってくるだろう。薄暗い日本間から聞こえてくる柱時計の音は、うすきみわるいものでもあった。時間というものは、そういうところでつくられるものなのか。〈水時計から砂時計〉という項目がある。日時計は公園などにあったりするが、雨の日の公園には行ったことがないから、雨の日の日時計を見たことがない。傘をさして日時計を見ている光景も、漫画的で面白いではないか。
 〈砂時計の登場で3分でも5分でも自由に計れるようになりましたが、すぐに砂が落ち切るので、しょっちゅうひっくり返さなければならない、という面倒なものでありました。〉(本書より)
 水時計も砂時計も本物を見たことがない。砂時計を見たくて時計屋さんにいっても置かれてないだろう。時々、旅行などした時、みやげ物として観光地などで小さな砂時計の型をしたもの(おもちゃ)を売っている。砂時計は、漫画の題材になりやすいから、外国漫画でもよく見かける。私も描いたりもするが、世界中の漫画家が一作や二作は必ず描いているだろうから、よっぽどのアイデアでなければ同じようなアイデアの漫画となってしまうだろう(そういう点では無人島漫画に似ている)。自分に浮かんだアイデアは必ず誰かにも浮かんでいると思ったらよいだろう。砂時計漫画を最初に描いた漫画家だけが安心して自分だけのアイデアと思ったらよいだろう。そんなことより砂時計そのものを考案した人がすごいということだ。








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