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評者◆秋竜山
なぜ他人の悪口が面白いのか、の巻
No.3163 ・ 2014年06月21日




■週刊誌が売れるのは、他人の悪口が書かれてあるからだ。他人の悪口ほど面白いものはないし、読者はそれを期待する。新聞の広告の見出し記事を読んだだけで、やっぱり週刊誌を買ってしまう。なぜ他人の悪口が面白いのか。それは身内の悪口ではないからだ。他人の不幸ほど笑えるものはない。世の中の笑いは一〇〇パーセント、他人の不幸によって成り立っているだろう。「いや、これは、ですねえ。あなたの不幸を私が笑ったのを、私をせめないでください。私が、笑ったのではありません」「そんなことが世の中に通用するとでも思っているのか。笑っていて、私が笑ったのではないなどと。それじゃァ誰が笑ったというのだ!!」「私の脳が笑ったのです」「聞くけど、その脳はいったい誰のものだ」「私のものです」「ほらみろ。お前のものだろ。お前が笑ったことになるだろ。脳が笑ったなどと、脳の責任にするな」「そーいう問題ではないんです」「どーいう問題なんだ」。
 髙橋英彦『なぜ他人の不幸は蜜の味なのか――「こころ」はここまで解き明かされた!』(幻冬舎ルネッサンス新書、本体七七八円)を読むと、脳は他人の不幸は蜜の味のように大好物であるらしい。限られた特別の脳だけのものではなく、あらゆる脳がそうであり、誰の責任でもない、すべて脳の責任であることがわかる。どんな脳も、そのように感ずる仕組みになっている。「私の脳は、違う」と、反論することはできないだろう。人間の脳というものはそんな薄情なものなのだろうか。よく考えてみると、そう思えるふしもないこともない。そうかもしれないとさえ思えてきたりもする。
 〈「他人の不幸を喜んでしまう」という不謹慎な感情を抱いた経験は、おそらく誰にでもあるのではないでしょうか。中には、そんな感情を抱いてしまった自分を「悪い人間だ」と責めてしまう人もいるかもしれません。しかし自己嫌悪に陥る必要はありません。なぜなら、そもそも人間の脳が、他人の不幸を「蜜の味である」と感じるようにできているからです。それだけではありません。相手に対して「嫉み」の感情を抱いている時、脳はその人の不幸を、より強く、「喜び」として感じます。〉(本書より)
 絶海の孤島、無人島に一人の男が漂着した。なんの問題はなかった。そこへ、もう一人の男が漂着した。無人島に二人となった。とたんに二人の間に、「嫉み」という感情がうまれるのである。もう一人が漂着した。女であった。その三人の間にうまれたのは「嫉妬」であった。当然の感情かもしれない。一人の女を二人の男がとりっこする。そんな無人島漫画は世界共通のテーマでもある。嫉妬漫画というべきか。漫画でなく、現実だったら漫画以上の面白さがあるだろう。
 〈心理学では、この二つの感情は異なるものとされています。両者の違いを簡単に説明すると、嫉み(envy)は二人の登場人物または二つの集団間で成立する感情です。これに対し、嫉妬(jealousy)は3人の登場人物を必要とします。たとえば、男女間の嫉妬であれば、男女のカップルと恋敵の別の男性(または女性)が必要となります。〉(本書より)
 脳は他人の不幸を蜜の味のように喜ぶが、では他人の幸福の味はどんな味だろうか。







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