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評者◆添田馨
“極右”の輪を広げよう――極右のレッテルを貼られることを極度に恐れる極右たち
No.3163 ・ 2014年06月21日




■「極右、いい言葉だ。もうこの言葉を広めるしかないだろう。昨今のヘイトスピーチの各地での盛り上がりについて、徳島大学の樋口直人さんが本を出版した。その記念の講演のなかで述べていたことだ。極右という言葉を日本でももっと広めるべきだと。
 以前、極左という言葉があった。そのあとには「…テロリスト集団」などの物騒な単語が付されるのが常だった。いまこの言葉は完全に死語になっている。逆に極右は言葉としては存在していたが、これまで遠いヨーロッパなどでの一部の政党を指すのに使われる程度で、少なくとも日本国内の誰彼の思想を評して使われるようなことはあまりなかった。ならば今日から使えばいいのだ。その理由は、極右という名辞に対して、明らかに呼応しあう現実の事象があちこちで顕在化してきたからである。
 “極右”の一般的な意味は、偏狭な国粋主義者とか過激な排外主義者とか、要するにスタンダードな保守性を大きく逸脱していることに加え、人間として大事であるはずの何かをその偏った原理主義的性向ゆえに欠落させてしまった残念な人々の総称といったところだろうか。極右という言葉の最も良いところは、あきらかにその体質が極右であっても、本人が極右のレッテルを貼られることを極度に恐れる、そんな稀有なポジションにある言葉であることだ。ある意味でこれは相手にその根底からダメージを与えることのできる、いまだ知られざる究極の偽装的差別語なのだ。
 このようなことを念頭に置きながら、いま自分の周りを見渡せば、どこかの国の総理大臣をはじめとして“極右”というこの素敵な呼び名を冠したくなる人々がごまんと見つかるはずである。だったら彼らを遠慮なく「極右!」と呼び捨てよう。そうやって極右の輪をどんどん広げよう。極右の輪が広がれば広がるほど、その魔法の言葉はより広範な極右達をも封じ込める役割を果たすに違いない。それも立派な闘い方のひとつだと私は思う。








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