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評者◆秋竜山
画家になるには、の巻
No.3161 ・ 2014年06月07日




■「画家とモデル」は、運命的出会いであれば名画をうむ。只の出会いは只の画となる。古今の名画をみれば、画家とモデルがいかに運命的な出会いであったかがわかる。それにしても、全裸の女を、自由にあれこれ注文をつけてポーズを決め、絵にするのだから、これがうらやましくなくて、なにがうらやましいというのだろうか。画家はいう。「これが仕事である」と。仕事となれば、文句もいえないだろう。画家の仕事は芸術のためである。画家でもないものが画家をマネて「画家とモデル」をやったとしたら、「いやらしい」と、世間は眉をひそめるだろう。「いや、これは芸術のためである」と、いったとしても世の中は認めてくれないだろう。只のひとは、たんなる「画家とモデル」ごっこになってしまうようだ。 千住博『芸術とは何か――千住博が答える147の質問』(祥伝社新書、本体八二〇円)を読む。これから画家を志すものにとっては勉強になるだろう。本書では147の質問に、著者の千住画伯がわかりやすく答えている。〈短命と長寿の芸術家、どちらがすばらしい作品を残していますか?〉このような、むづかしい質問に、
 〈20代前半でものすごい作品を描いて、注目を浴びたり華々しく受賞したりして世にデビューした画家で、その後ずっと長生きして、デビュー作を超える作品を描いた人はそうそういるものではありません。〉〈長命といっても、作品の質的ピークはせいぜい70代ですから、それより長く生きても、90歳100歳でそれまでの画業を塗り替える不滅の傑作を描いた、という例もあまり聞いたことがありません。〉〈つまり、すばらしい作品と命の長さは、あまり関係ないということです。〉(本書より)
 いったい、どーとらえたらいいのだろうか。画家は長生きしたってしょうがない、ということかしら。ザンコク物語である。〈芸術家にとって、「死」とは何ですか?〉とか〈最高の芸術作品とは何ですか?〉〈人間に芸術は必要ですか?〉と、いう質問が続き、最後に〈芸術とは何ですか?〉と、本書ではそれに答えている。一番シンコクな質問は〈美大、芸大の教育で画家になれますか?〉だろう。かなり、ツーレツである。画学生は、それをもっともしりたいだろう。画学生の親たちだって、しりたいに決まっている。「なれます!!」と、天の声のようなひとことを答えてほしいものである。ところが、答えはこれ以上ザンコクなものはなかろう。キッパリと〈基本的にはなれません。〉こうまでハッキリといわれてしまうと、「俺はいったい、学校へ何しにかよっているのだろうか。わからなくなってしまった」と、画家の道はとざされてしまったような気分になってしまう。「画家になんかなるな」と言われてもなってしまうタイプで、そのような人たちが画業に専念するうえで、最低限必要な基礎力を学ぶ場が美大、芸大だと、本書はいう。宝クジに当たるより画家になるということは大変であることはわかっている。それでも誰もが宝クジを買う。そして美大・芸大へかよう。プロをめざしているものに、「なれなかったら、シュミとして人生をおくったらいいだろう」という言葉ほどザンコクなきわまるものはなかろう。画家への道は学校ばかりではないというのも、うれしいような、うれしくないような。







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