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評者◆ベイベー関根(セックスシンボル)
ボンクラと腰抜けの間に
悪魔を憐れむ唄 1
古泉智浩
夕焼け集団リンチ
古泉智浩
No.3160 ・ 2014年05月31日




■いよいよ来たか、本連載でも古泉智浩を取り上げる日が! いや、この人はいつか取り上げなきゃなーと思ってて、『チェリーボーイズ』のころとか、『ピンクニップル』のあたりとか、はたまた『ワイルドナイツ』のタイミングとか、いろいろ思い悩んでいたわけだが、ついに来たね、古泉の時代が! 世間的にはともかく!
 で、上のタイトルを見て気がついた方もおられよう。そう、みんなタイトルがカタカナばかりなのだ!
 いやいや違う、それはそうだがたまたまなんであって、とにかくどのタイトルもボンクラなことがわかるっしょ?
 タイトルもボンクラなら中身もボンクラで女とやりたいとかいった低次元かつ深刻な問題に悩みまくる登場人物が、ない壁に頭をぶつけまくるというのが古泉マンガの大テーマだ。
 いまどきそういうダメ男を描くマンガは全然珍しくないわけだが、この人が偉いのは、ダメなことに開き直らないところだなー。硬くて生気に乏しい独特な線にもなんとなく作者の性格が現れてる気がするけど、それがゆえに『デトロイト・メタル・シティ』の人みたいにドーンと当たらないのかもしれない。ま、だけどそれでいいんだよ!
 んなわけで、今回はその古泉本が2冊同時に出たんで、それを紹介するぜ。
 1冊目の『悪魔を憐れむ唄』1巻は、『コミックビーム』に連載中の作品。今イチ伸び悩む芸人・渡辺が、ある日ホスト風の二人組にサイフをすられる。勇気を出して家まで追いかけ、サイフを返してくれと頼んだところ、彼らは自分たちは悪魔なのだと正体を明かす。二人に目をつけられ、恐怖のあまりにパシリをさせされる渡辺だが、彼らのはたらく悪事がチラチラ目に入ってきて、気が気ではない。さあ、どうする渡辺!?
 この渡辺が、悪魔に良心を売ってめちゃめちゃ面白い人になるのかと思っていたんだけど、そうでもないのかな? ちょっと話のテンポが遅いのが気にかかるが、ともかく今後の展開に期待だ! 悪魔に接する恐怖と日常の何もなさとのギャップが繰り返し描かれるところが、個人的には興味深かったなー。
 2冊目は、短篇集『夕焼け集団リンチ』。2006~12年にかけて描かれた作品を集めたもので、エロく切ない「時をかける男」や、「童貞ブーム」のバカバカしさを今さらながら痛感させられる「奪われた童貞」、暴力の恐怖と人間の怯懦をあますところなく描き出したといっていえなくもない表題作など、いずれ劣らぬ力作、いや脱力作ばかりだ!
 さっき「ダメ男」の話をしたけど、単にふだんからダメっていうだけじゃなく、やむにやまれぬ状況に押し込まれたときに出てくるダメさがこれでもかと描かれてて、やっぱこれは稀有な才能だよな!
 ホントは今回、田中相の『千年万年りんごの子』の3巻を取り上げようかと思ってたんだけど、終わってみたらあんまり面白くなくて止めちゃった。そういう厳しいチョイスを経て、この連載は続いているのだ!







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