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評者◆秋竜山
もっとザンコクな喜劇、の巻
No.3159 ・ 2014年05月24日




■早川タダノリ『神国日本のトンデモ決戦生活』(ちくま文庫、本体九五〇円)は、二〇一〇年八月に刊行された本の文庫化であるから、すでに読んでいるはずだが。
 〈本書では、「大東亜戦争」前後に、当時の雑誌・広告・パンフレットの類が、読者=オーディエンスに訴え、押しつけようとしていた(大日本帝国臣民にふさわしい)「感情生活」や「意識形態」のありさまを、重箱の隅をつつくように観察することを目指した。〉(文庫版あとがき・本書より)
 本書に掲載されている当時の広告・写真は活字と違って、「ホラ、この通りだ。ウソなんかじゃない」と、いう力を持っている。そして、「やっぱり」と、思えてくる。
 〈昭和十八年八月十三日の朝日新聞に、大東亜レコード(ポリドールから社名を変更)の新譜の広告が載っていた。〉(本書より)
 そして、その広告の写真が本書に載っている。
 〈大東亜(旧ポリドール)レコードの「決戦盆踊り」広告。「朝日新聞」昭和18年8月13日付〉(本書より)
 その広告の写真が。〈決戦盆踊り、江崎小秋詞、飯田景應曲、三丁目文夫染千代(合唱付)。片面、働け働け〉戦争となると、人間が実際にマンガみたいなことをするのものだ。「働け働け」という歌が、どんな歌であったか。文句をいわずに働け!!だろう。戦争のために働けということだ。戦争だから、殺しあいである。殺しあいのために、働けということになる。そんな歌までできて。その当時は、今では考えられないことをやっても文句もいえなかったし、なんとも思わなかっただろう。戦争なんだから。
 〈大東亜交響楽団による「勝ち抜く為の大演奏会」(昭和19年6月23日、24日)のプログラムに刷り込まれた、映画「米英激滅の歌」(松竹)の広告。〉(本書より)
 よくテレビドラマなどでこの時代の世の中などが出たりする。あきらかに仕掛けられた時代であったことはよくわかるが、ドラマ化されたりすると、なつかしい、ような。バカバカしいような。マンガみたいな。それでいて、日本人って、あの時代のこーいうドラマが好きなんだよなア!!と、「日本人って」なんて、いいかたをする。ドラマの内容が一息ついたような、しまりを感じさせる。視聴率も、上がるとか上がらないとか。ドラマでの登場人物がすべて生き生きした演技をみせてくれる。これが日本人である!!という、自信たっぷりの演技である。それに、よく似合っている。まじめくさった演技はすればする程、喜劇になっていくのが面白くもある。あの真にせまったバカバカしさのある演技はいったいなんなんだろう。あの「大東亜戦争」を知らない、ずっと後から生まれてきた世代の人達が、りっぱに演じているのだから、もしかすると、あの戦争はまだ続いているのかと、考えてしまう。笑いは人ごとだから笑えるのであって、自分にかかわっていることは笑えないものである、という。昔、あの戦争が終わって十年たったかたたない内に戦争喜劇映画が続々とつくられた。大笑いしてみたものだ。悲劇であるはずのものが喜劇になってしまうことに、私は不思議な気持で映画をみたものだ。悲劇もザンコクであるが、喜劇はもっとザンコクかもしれない。







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