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評者◆小嵐九八郎
濃密恋愛小説を志願する人には必読
官能教育――私たちは愛とセックスをいかに教えられてきたか
植島啓司
No.3152 ・ 2014年03月29日




■小説の生命力というか王道として、確と、愛と性があると思い込んでいる俺は、アルバイト先の大学では、谷潤の『少年』、大江健三郎氏の『性的人間』、村上龍氏の『トパーズ』をテキストとして使う。が、年年、学生の反応は淡くなる一方、飲み会でも、こういうテーマにはしらーっとなる。無論、耳から得たのか、スマホ情報か、愛と性については当方の大学時代より詳しい。ただし、男子学生から相談を受けることが頻繁にあるけれど、実体験は、悲しくなるほど貧しい。
 という当方も、現今の日本の少子化、婚姻率の低下には悶悶とするばかりで、ブンガク以前の大テーマのはずなのに、人類史を含め地球史の中での、類の滅びを見つめておろおろしている。
 その上で、青年前期には、徳川十一代将軍の家斉が“側妾”が四十人ほど、子供が五十五人ぐらいとのことに羨ましさを覚えたことがある。ま、老いると、こりゃ、SEXは単なるロードーか、否、徳川家による治世のための義務かと、家斉に同情したくなる。そう、マルクスはメイドに妊娠させてエンゲルスが奔走したとか、レーニンは逃亡中のスイスで遊びに遊んだとか、毛沢東の晩年は若い女を傍らに置いて頑張ったとかの、嘘か真か解らぬが、多分本当の話に「やっぱり、人間」と感激したことはある。それに、婚姻史についても、エンゲルスだったか『家族・私有財産および国家の起源』とか、ヴィクトリア王朝時代の不滅の告白小説『我が秘密の生涯』とか、赤松啓介の『夜這いの民俗学』はちゃんと読んでいる。
 ところがである。当方の知識は幼稚園児と知らされた新書に出会った。植島啓司さんの『官能教育』(幻冬舎新書)だ。なにしろ歴史としての性愛、少数の民族のそれ、現代のそれと、膨大な新しい分析がしてある。問題意識は「一夫一婦制は正しいのか、持続するのか」にぎりりとして絞られ、月並みで済みません、普通の若者、飲み屋の女性を口説く中年、濃密恋愛小説を志願する人には必読だ。虚しさを覚悟しながら是非に。







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