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評者◆添田馨
人間が呼び出す絶対的トラブルメーカー ――巨人的なるものの考察(2)
No.3151 ・ 2014年03月22日




■ある自動車メーカーのテレビCMで、来年劇場公開予定の実写版『進撃の巨人』の映像が一瞬だけ流れたとき、私は自分の目を疑った。最後の数瞬、超大型巨人が姿を現わすその場面は、紛れもなくあの有名な“古典的”アニメ作品に登場したもうひとつの“巨人的なるもの”の姿に生き写しだったからである。1984年に公開された劇場版『風の谷のナウシカ』における「巨神兵」のことだ。
 統御できない超越的な力のイメージが、そもそも巨人的なるものの根底には隠れている。神話や伝説に登場する巨人とは、まだ人間にとって身体化されていない自然そのものの威力といってもいいだろう。だから巨人が単独で行動する分には、人間に直接危害が及ぶということもない。彼等が脅威となるのは、例えば人間の側が何らかの禁制を破るなど、必ずこちらの世界との葛藤のもとに呼び出される場合だけなのだ。同じくジブリ作品の『もののけ姫』に登場した巨人「ディーダラボッチ」はまさにその典型例であり(それはシシ神の殺害を機に出現する)、その意味で巨人的なものは同時に、人間が繰り返してきた自然界との受苦(leiden)的な関係の記憶、いわばその歴史の無意識を色濃く反映せざるを得ない存在でもあるのだ。
 ところで、最終兵器であり最後の審判者でもあったナウシカの「巨神兵」は、明らかに東西冷戦構造を背景に持つ核戦力の暴力性を表象していた。それがバイオテクノロジーによって人工的に造りだされた存在であることも、汎神論的な自然を象徴する「ディーダラボッチ」とは好対照をなしていた。原子力を連想させる「巨神兵」がまさにそうだったように、人間が原因で生まれる巨人的なるものは、どれも初めから絶対的トラブルメーカーたるを宿命づけられているのである。
 そこで次にどうしても考えたいのは、その巨大で獰猛な存在者たちを物語のなかのヒーロー、ヒロインたちは一体どうやって融和に導くのかという最終の問いへの答えに他ならない。







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