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評者◆伊達政保
硬派はつねに状況の最前線で行動する
ソウル・フラワー・ユニオン――解き放つ唄の轍
石田昌隆
No.3151 ・ 2014年03月22日




「反原発デモに行けば、『THE NUCLEAR ERA IS OVER!』と(略)書いてあるソウル・フラワー・ユニオンのマフラータオルを掲げている人を良く見かけるし、何人ものソウル・フラワー・ユニオン系の友人にばったり出会う。ヘイトデモへのカウンター行動の列に参加しに行ったときもソウル・フラワー・ユニオン系の友人にばったり出会った。ソウル・フラワー・ユニオンは世間一般に幅広く知られているようなバンドではないが、このような現場に来る人には浸透率が高い。社会は過酷になっていく一方だが、同じような思いの人と接する機会はむしろ増えていて救われた気持ちになる。」(中略)「ソウル・フラワー・ユニオンの音楽は、そんな我々を繋ぐ不可欠なものとして存在感を増している。」石田昌隆著『ソウル・フラワー・ユニオン‐‐解き放つ唄の轍』(河出書房新社)。
 『ミュージック・マガジン』で「音楽の発火点」と題し、ミュージシャンなどのフォトと文章を2百回以上連載し続けているカメラマンの石田昌隆が、ロック・バンド「ソウル・フラワー・ユニオン」の20年の軌跡を書き下ろした。これまで多くのミュージシャンの伝記やドキュメンタリーが書かれてきているが、ここまで時代や状況に並走し続けるミュージシャンと、それを追いかけるフォト・ジャーナリスト的感性を持つカメラマンがガップリ組んだ本を、寡聞ながらオイラは知らない。だからこそ、この20年間の社会情勢変化(悪い方向だが)を本書で知ることが出来るし、その社会を変えようとする闘いをも知ることが出来る。
 これまでのソウル・フラワーの足跡をたどれば、横浜寿町、阪神大震災、韓国、北朝鮮、東チモール、アイルランド、釜ヶ崎、沖繩、パレスチナ、台湾、東日本大震災、首相官邸前など、多くの現場がそこにある。彼らにとってそれは必然であり、そこで音楽が生み出された。そしてソウル・フラワーの音楽を聞くもの達にとっても、それらの現場に立ち現れることが必然となっていったのだ。一言でいえばそれは「硬派」ということではないか。「硬派とは何か。左右激突の現場に突如として登場してくるこちこちの行動至上主義者である。硬派の分布は多岐にわたる。共通していえることは、硬派はつねに状況の最前線で行動するということだ。」豊浦志朗(船戸与一)著『硬派と宿命』。ソウル・フラワーの音楽の持つ力が、状況の最前線での行動を促している。
 オイラ18年前この連載の第一回目を、ソウル・フラワー・ユニオンの音楽ばかりでなく、その演奏活動の重要性について述べるところから始めていた。現場主義者はやはり変わらんね。







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