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評者◆ベイベー関根(セックスシンボル)
最近関係各所で話題になってたりなってなかったりする人々
ぷらせぼくらぶ
奥田亜紀子
祈りと署名
森泉岳士
No.3150 ・ 2014年03月15日




■いやー、大評判だよねー、奥田亜紀子『ぷらせぼくらぶ』。まずはよかったよかった。「成長」をなかなか受け入れられない二頭身の女子中学生岡ちゃんを狂言回しに、多感な時期の……といえば聞こえはいいが、要は痛い中学生群像を描いた連作短篇集。幼い恋とか友情とかいじめとか裏切りとか、とかまあそういう。
 とかまあそういうありきたりな感じに見えるかもしれないけど、痛い話をキレイゴトにまとめるでもなく、問題提起というかたちでぶちかますでもなく、猫がついてくるような微妙な距離感でほっぽっとくところが新しい気がするなー。
 たとえば第2話「運命のプロトコル」では、占い好きで「残念」な女の子の視界に、出っ歯でこれまたイケてない物理好きの男の子が入ってくる。で、これが恋に発展するかと思いきや、いろいろ行き違いが発生して、その手前で話は終わってしまう(その後でつきあうことになるけどネ!)。そのさじ加減が、人によっては「わかりにくい」と見えるかも。
 で、さっきの「幼い恋とか友情とか……」っていうのは、要は人間関係じゃん。だけど、この作品では、親とか先生は全然眼中になくて、とにかく隣の子からどう見られているか、あるいは隣の子との格差ばっかが気になってるんだよなー。
 ふつうだったら「これが中学生のリアルだ!」とか気色ばむとこなんだろうけど、ちょっとそうもいえないなー、中沢けい原作/鈴木卓爾監督『楽隊のうさぎ』を観ちゃったから。
 ところで、皆さん、お気づきになられただろうか?大橋裕之の名作『シティライツ』の過剰なスクリーントーンを貼っていた人の名前が、この作者と同じだったことに!
 で、次。森泉岳士『祈りと署名』。ごらんのとおりの独特なタッチ。これはなんと、水で描いて、そこに墨を垂らす、という手法で描かれているらしい!前に、BDの作家がそうやって絵を描いているのを見たことあるなと思ってYou Tubeで検索してみたんだけど、「死の水ダメ」のキャンペーンの映像しか見つからなかった、残念。で、さらに爪楊枝と割り箸を使って(だけじゃなくて筆もだと思うけど)描いているらしい。ふ~ん。
 実をいうと、そういういかにもアーティスティックでござい、みたいな作家/作品は、当連載では冷たくあしらうのが常なんだけど、できた本を読んでみるとねー。うーん、これはやっぱ大事な人であり、大事な本だなーという気がすんね。この人は「神」と「世界」のことを考えているな、という。筋の紹介は省略。
 で、これまたふつうの人にはそこが「わかりにくい」と見えるかも。でも、いいんだ! さっきの奥田さんが半径3メートルくらいの人間関係にこだわっているのとは対照的なのに、「わかりやすさ」からはみ出てしまうという点では共通しているのもなんとなく面白い。あれ? そういや「ぷらせぼ」と「祈り」……?







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