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評者◆秋竜山
脳に本のタコ、の巻
No.3150 ・ 2014年03月15日




■近所に古本屋が開業した。小さな店ではあるが、大きければいいというものでもない。どんな古本が並べられているか。そこで古本屋の価値が決まる。気になったので、サンダルばきで駆けていった。新刊本の開店に駆けていくのと気分が違う。古本屋の場合は、どんな古本が並べられてあるか気になるところだが、こーいう気分は新刊本の開店にはないだろう。古本の場合は掘り出し物につきる。古本さえ並べば古本屋といえるというわけではないだろう。個人的には、買いたい本があるかないかだ。そして、問題は、その買いたい古本が、買えるか買えないか、ふところ問題である。たいがいほしいと思う古本は高値がついている。で、手も足も出ない。ただながめているだけ、その内にその本は姿を消してしまうのである。今まで、そんなことがどれ程あったことか。過去の古本屋の記憶といったら、「あの時は残念だったなァ」といったものである。
 サテ、今回。私はその古本屋へ一歩足を踏み入れた。と、同時に、生ツバをのみ込んだ。なんと、私の眼に飛び込んできたのが、昔の(昭和四十年頃)漫画サンデーが十一冊と、あと一冊は別冊週刊漫画であった。十二冊の当時の漫画週刊誌がヒモでゆわえて置いてあった。そして又、別の棚に、発行年月日が印刷されてないからわからないが、借本時代などで人気のあった、幻の漫画本である。ボール紙のような厚いページだ。今では考えられないページの紙だ。「辰巳ヨシヒロ、山森ススム、石黒昇、桜井昌一」といった、知っている人にとっては思い出深い劇画家たちだろう。
 そして、私が、もっともなつかしかったのは、この本の発行人である長井勝一さんの名前が印刷されていたことだ。漫画サンデーは編集長、峯島正行さんである。峯島さんとは今でも時折りお会いさせていただき、昔の漫画の話をお聞きして、たのしい時間を過ごさせていただいている。
 それにしても、時代というのか時間の流れはかなしくもあるものだ。掲載されている漫画家のすべてが亡くなってしまっている。小島功さん、サトウサンペイさん、ぐらいである、お目にかかれるのは。
 岡崎武志『蔵書の苦しみ』(光文社新書、本体七八〇円)を読む。谷沢永一の蔵書について、が面白い。
 〈「若い時に名著だという触れこみに釣られて買った本が、軒並み殆ど私の役に立たなかったようである」。手許に残したのは「超一流の学者の著述」。ただし「二流以下をもし読み漁らなかったら、ひょっとすると超一流を超一流と認めることができなかったかもしれない」と言う。さすが蒐書六十年、脳に本のタコができるほど、書物の大海を泳いできた人物ならではの含蓄あることばだ。さらに谷沢流名著見極め術として興味深いのは、「外装のいかめしくない気易くしとやかな類いの本に、有益なヒントが沈められている」と指摘していること。〉(本書より)
 これは、〈脳に本のタコができるほど〉の人がいえるのであって、あまり本になじみのない人には、「ウン、なるほど、わかった。そーいうものですかねぇ」と、しかいえないだろう。二流以下の本って、どんな本だろうか。読んでみたいものである。







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