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評者◆小嵐九八郎
歌の世界は文語から口語へ――東直子・加藤治郎監修「新鋭短歌シリーズ 第一期」(本体各一七〇〇円・書肆侃侃房)
No.3147 ・ 2014年02月22日




■一月中旬、アルバイト先の大学で若い諸君から風邪をもらったらしく、丸二日、寝たり起きたりしていた。酒だけは、やめられないというより、おいしく、まだ半年は生きられそうだ。熱や、けったるさがくると、どうしてもポエム、そう詩、それも短いのを、リズムを持ったのを欲しくなり、思い込みだろうが、短詩型文学というのは肉体への薬とか癒しになるらしいと改めて感じた。
 寝たり起きたりの二日間では、どうせなら若い人達の歌歌を知ろうと、書肆侃侃房出版の「新鋭短歌シリーズ」の第一期全12冊のうち5冊を読んだ。解説は東直子氏と加藤治郎氏の二人が、ふふっ、苦しみつつ、気配りをしながら、交互に書いている。誉めに、歌人は悩む。
 文語が主で口語が従の歌集には黄金律と思われる57577の韻律が心地良いとしても、うーむ、今そのものの、静かにしてゲージツ的管理社会、人類史に逆を向かせるナショナリズムのささくれの歌はなく、修司や邦雄を超える志が足りないように映り、ちいーっと、退屈。
 ところが、である。
 口語というか、喋り言葉を主要な武器とする新鋭歌人となると、いきなり、ポーランド産の濃いズブロッカを飲まされる歌歌をよこしてくる。与那国産のどなんとは別の……。
 五島諭さんの『緑の祠』では、次の通り。
 《左の靴紐を結んで(西風の日の)右の靴紐を結んだ》
 まるで一首に、感動も、寓意も、虚無すら託さない、無意味そのものの、その意味では現代の若者だけでなく、当方のような老人にもある、徒労そのものに花を咲かせている。
 望月裕二郎さんの『あそこ』では、意味性を持つ歌の上に次の感性だ。
 《伝えたいことの不在を伝えたい 便器、おまえは悲しくないか》
 文語から口語へ、通信革命と同じく激変の歌の世界は、散文より洪水期が早い。ついていけない老人も、楽しみに溺れそう。







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