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評者◆細川早苗(ブックス・みやぎ)
身体に敏感に生きていこうと思わせられる本
脳はバカ、腸はかしこい――腸を鍛えたら、脳がよくなった
藤田紘一郎
No.3143 ・ 2014年01月25日




■「重大な報告があります。本書を書き終える時期に、私の身体に新しい命が宿ったことが判明しました。実に四年ぶりのことです。」
 「あとがき」でみつけたこの文章。
 ん? 藤田先生、女性でしたっけ?
 そんな思いで読み始めたのが今回オススメする『脳はバカ、腸はかしこい――腸を鍛えたら、脳がよくなった』(藤田紘一郎・三五館)です。
 先に書いた“新しい命”は6代目サナダムシ「ホマレちゃん」着床の報告の文章だったわけですが、知らなかった……。サナダムシってヒトの体内で育てられるんだと。
 実はこの本を読む前、ちょっと体調を崩していたのですが、原因はよく判らず、便秘のせいかなぁと思っていたのです。
 読後、「あ、脳のせいだ、きっと!」などと単純なもので、思ってしまいました。
 生物に最初に備わった臓器は、脳でも心臓でもなく腸なのだそうです。腸が脳の役割までしていた、そしてそれが発展していったのが脳。しかし、その発達した脳が人間をおかしくしているのだと先生はおっしゃっています。
 人間の脳は高度に進化した結果、自分の報酬系さえ満足すれば、結果は人間の正常な精神状態がどうなってもよいというようになったと。なんだか当てはまり過ぎて、気が沈みました。
 最近の消臭・除菌ブームはどうなんだろう? と個人的に思っていました。口臭だって体臭だって身体のバロメーターになる時あるなぁ、やっぱりあんまりひどいのは病気だと思うし。それをみんなこぞって消すことに躍起になって、なにかがおかしいと思うのは私だけでしょうか? きれい過ぎると免疫力も腸内細菌もなかなか育たないそうです。「三秒ルール」くらいがちょうどいいのでは? と思うのは極端すぎますかね?
 腸が脳よりかしこく、幸せな脳を腸がどうやって作るか、例やデータで詳しく書かれているので読んでいただきたいですが、ミミズの素晴らしいセックスの話から日本の少子化・高齢化、人間の生きる力まで、ほんと読む者を飽きさせません。
 みなさんは失恋した時、お酒飲みますか? 私は失恋してなくても飲みますが、交尾をメスに拒まれたハエも、アルコール分を多く含んだ餌に飛びつくそうです。次にハエを見たとき、同情の念と共に見てしまいそうな自分が笑えます。
 ここで私の体調不良に話は戻ります。年末年始の忙しさの中でもやはりなにか楽しみは欲しいものですよね。そんな中、私の楽しみ中枢を満足させていたのが、〈食欲〉でした。とにかく空腹でなくても、何か食べたり飲んだりして満足感を得ていたのです。そう、腸の調子なんて無視して……。
 身体は必ず警告音を発しているはずだと思うのですが、忙しい現代人、脳に送られる偽安心音に一瞬一瞬だまされ続け、体調や精神を病んでいる場合もあるのではないでしょうか?
 頭で考えすぎてもよくないことって結構あるな、もう少し身体で考えるクセをつけ、身体に敏感に生きていこうと思わせられる本でした。







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