書評/新聞記事 検索  図書新聞は、毎週土曜日書店発売、定期購読も承ります

【重要なお知らせ】お問い合わせフォーム故障中につき、直接メール(koudoku@toshoshimbun.com)かお電話にてバックナンバー・定期購読の御注文をお願い致します。

評者◆伊達政保
優しい贈り物、これまでになかった自殺の本
自殺
末井昭
No.3142 ・ 2014年01月18日




■「僕は、自殺が悪いこととも、もちろん、いいこととも思っていません。どうしても生きることがつらくて自殺しようとする人に、『頑張って生きようよ』と言うつもりはありません」「どうしても死にたいと思う人は、まじめで優しい人たちなんです」「まじめで優しい人が生きづらい世の中なんですから」。末井昭著『自殺』朝日出版社。
 あの白夜書房で一世を風靡した編集者の末井さんが自殺について朝日出版社のブログで連載していることを知ったのは、ツイッターでだった。ヘー、末井さん、今こんなこと書いてるんだと、たまに覗いていたが、それが本になった。末井さんと自殺というと、真っ先にお母さんのダイナマイト心中を思い出してしまう。そのことなどを書いたエッセイ集『素敵なダイナマイト心中』(北宋社、復刊ドットコム)も有名だ。
 いつも飄々としていながらもひかえめな末井さんには、オイラ節目節目で関わったり世話になっていた。彼が最初に立ち上げたオナニスト・マガジン『ニューセルフ』では「冷し中華思想の研究」全冷中神奈川県委員会編が連載され、感じる映画雑誌『ウイークエンドスーパー』では全関東河内音頭振興隊による河内音頭特集が数回組まれた。また、新宿区役所区長室で割腹し、生き残ったオイラを心配した友人達が集合して『写真時代』に大衆切腹論として掲載された。自殺未遂を前向きに転倒することで、オイラを励まそうとする皆の気持ちが痛いほどよく分かった。その後も末井さんとはいろいろな場面で出会っている。
 本書『自殺』では、優しく思いやりのある末井さんの人柄がにじみ出ている。そればかりではない。これまで知ることが出来なかった、いや敢えて表に出してこなかったのだと思う、末井さんの内面をカミングアウトしているのだ。自殺する人に真摯に対面しようとする姿勢が、自分の内面の弱さを見つめてさらけ出すことになったのだろう。あの飄々とした末井さんが、数々の雑誌を編集してきたその裏側で、男女のドロドロとした内面や、表現者としての苦悩があったとは。そして、両親が心中された方、秋田県の法医学者で自殺の考察をした方、青木ヶ原樹海と自殺をよく知る方へのインタビューは、非常に興味深くある意味で面白いものとなっており、編集者としての末井さんの手腕が発揮されている。面白く読める自殺の本というのは矛盾するようだが、これまでになかったものだ。自殺を考える人は自分や自殺にしか目が向かなくなる。本書はそうした人や、知人に自殺をされてしまった人、そして自殺から目をそむける人への、末井さんからの優しい贈り物なのだ。







リンクサイト
サイト限定連載

図書新聞出版
  最新刊
『新宿センチメンタル・ジャーニー』
『山・自然探究――紀行・エッセイ・評論集』
『【新版】クリストとジャンヌ=クロード ライフ=ワークス=プロジェクト』
書店別 週間ベストセラーズ
■東京■東京堂書店様調べ
1位 マチズモを削り取れ
(武田砂鉄)
2位 喫茶店で松本隆さんから聞いたこと
(山下賢二)
3位 古くて素敵なクラシック・レコードたち
(村上春樹)
■新潟■萬松堂様調べ
1位 老いる意味
(森村誠一)
2位 老いの福袋
(樋口恵子)
3位 もうだまされない
新型コロナの大誤解
(西村秀一)

取扱い書店企業概要プライバシーポリシー利用規約