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評者◆ベイベー関根
21世紀に甦る山本周五郎!マンガで送る「ちいさこべ」
ちいさこべえ 2
望月ミネタロウ著、山本周五郎原作
No.3140 ・ 2014年01月01日




■ここんとこ、ど~ももうひとつピリッとこない作品続きだった望月峯太郎改めミネタロウだったけど、いやー、『ちいさこべえ』はいいね!
 勝因は、何つっても原作ものにしたことだろうな、しかも山本周五郎とは! うーん、やられたぜ。
 両親が火事で亡くなり、いきなり「大留工務店」の棟梁になった茂次。髭は何年も伸ばしっぱなし、サングラスもかけっぱなしで、ほとんど顔も見えないありさまだが、歳はまだ二六。小さいころから本が好きで、大学を出て世界を放浪していた時期もあるものの、大工の腕は親譲りだ。「どんなに時代が変わっても人に大切なものは人情と、意地だぜ」という亡き父の言葉を胸に、「大留」の看板をしょって立つ決心をする茂次だが、他人の手を借りまいとする意固地な態度はなにかと誤解されがち。そんな茂次の自宅には、焼け出された大工見習い2名が身を寄せ、さらには幼いころからの顔見知りでもあるお手伝いのりつと、彼女が面倒を見ている身寄りのない子供たち5人が転がり込んできた。個性豊かな子供たちに振り回されながらも、なんとか「大留」再建に向けて歩み始めた茂次に、今度は建築中の現場が火事になったという報せが飛び込んできた。引き渡し前の現場の損害はすべて「大留」が負わねばならない。さあ、どうする、茂次?
 山本周五郎の原作「ちいさこべ」は、いうまでもなく時代劇。本作はその舞台を現代に移し替えたもので、キャラクターを今風かつ反時代的に造形することにも見事に成功している……とかまあ、聞いたふうなことはよしてだな、この作品で大事な要素はふたつ。
 そのひとつは、ズバリ「女の闘い」だ! お手伝いのりつと、大留とも取引のある「一の町信用金庫」一の町支店長の娘、福田ゆうこ。どちらも実直で器量良しながら、気性と立場は正反対。茂次や子供たちをめぐって、このふたりの間に静かで苛烈な応酬が繰り広げられる。見逃せねえ!
 もうひとつは「欲望の読み違い」で、この原稿書いてる時点ではまだこれからなんだけど、あの感動的なシーンがどう描かれるのか、想像しただけでそわそわしちゃうぜ!(詳しくは原作参照のこと)
 彼らを取り巻く人々が、ほんの数人を除いてフリークめいた描き方をされているのに比べ、メインのキャラクターの表情は抑制されてて、3人とも台詞があるのに絵では口を閉じたままのコマが多い、というか茂次なんかほとんど顔が見えないし! 作者のこれまでのアドベンチャーやサスペンスものだったらそれでもっていたところ、今回は日常ものだけに、ちょっとキツいかなーと思ってたんだけど、そのかわり手が語る! 靴が語る! 背が、腰が、髪が語る! そして、ニアリー無表情の下に、微妙な感情の揺れがきちんと描きとられているのだ!
 とはいえ、女の子を描くときにいちいちこんなエロ目線で描かなくてもいいのにとは思うけどな!







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