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評者◆秋竜山
女房の黙り込みはきついよ、の巻
No.3140 ・ 2014年01月01日




■「キミ!! もっと、考えてから即答しなさい」。それでも、即答といえるのだろうか。なんて、考えながら。松浦弥太郎『即答力』(朝日新聞出版、本体一二〇〇円)を読む。本書で、面白かったのは、
 〈たとえば会議やプレゼンのあとで、自分が準備していなかった、あるいは予期していなかったような質問が来たり、答えを求められたりすることがあります。僕たちは不完全な人間ですから、背中に目があるくらいに注意深くあろうと努めても、すべてを察することは不可能です。そんなとき一番いけないのは、闇雲に即答すること。わかりもしないのに、あてずっぽうでいい加減なことを答える。どこかで聞きかじった借り物の意見で取り繕う。これはいただけない、即答力の悪用です。(略)こんな即答では、自らチャンスを捨てているようなものです。〉(本書より)
 「あなた、いったいどこで飲んできたのよ。こんな時間に」と、いつもの女房に文句をいわれる。亭主は即答するものの、すぐ女房に見やぶられてしまう。「友達に無理矢理さそわれたんだ」「僕はイヤだったんだけど、どーしてもといわれて、断れなかったんだ」。このような古典的な即答は昔からうんざりするくらいあるものだ。よくも、こんな古くさいみえみえの即答をするものだ。即答力のベンキョウをすべきだろう。こんな、いいわけのくだらない即答は絶対にいけない。女房だってバカではないということだ。
 〈その次にいけないのは黙り込むこと。沈黙、ごまかし、曖昧な笑顔。いたずらに時間を稼ぐのは、その場の全員の時間を奪う、マナー違反といっていいでしょう。〉(本書より)
 黙り込むということは、かえって女房をカッカとさせてしまうことだ。「もー!! やってられない」なんて、女房はカンカンになってしまう。いいではないか、たまに遅く帰宅したくらいで、と亭主は思うものであるが、そこで本書のアドバイスは、〈僕が思う最良の策は、「答えられない」と答えるという即答です。「私にはわかりません」という言葉で応えることも、即答の一つです。その件に関して自分は今情報をもっていない、整理していないということを即答するべきです。「答えられない」と即答する際には、案件にもよりますが「本日中にまとめて報告します」「次の会議で説明します」という期日を明確にした約束の言葉を添えるといいでしょう。こうすれば信頼を得られます。「即答」の効用の一つです。〉
 本書は、家庭内のどうでもいいいざこざではなく、会社内における社員であったようだが、
 〈即答力には瞬発力と同時に正直さが大切です。取り繕わず、正直に真実を答えるという瞬発力、思索と経験という、自分の手で生み出した情報しか提供しないという誠実さが必要です。〉〈あくまで余談になりますが、インターネットの検索は、人々がもとめることの、ほぼすべてに「即答」するからこそ、ここまで広く利用されているのです。〉(本書より)
 今度は女房のほうが黙り込んでしまった。女房が口をきかなくなったのだ。家庭内で一番困るのがこれだ。亭主の黙り込みより女房の黙り込みのほうが、きつい。亭主は女房にきつく言うべきだ。
 「ヤイ!! なんとか言え」。







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