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評者◆横尾俊成氏インタビュー
政治とは、自分たちの街を自分たちの力で良くしていくこと――読者の中に眠る〝アクションの種〟に確実に水を与える本
「社会を変える」のはじめかた――僕らがほしい未来を手にする6つの方法
横尾俊成
No.3137 ・ 2013年12月07日




■現・東京都港区議会議員の横尾俊成氏が、『「社会を変える」のはじめかた』を上梓した。平凡な大学生だった横尾氏が就職、そして議員になるプロセスを紹介しながら、誰もが〝社会を変える〟ことができるということを平易に解き明かした一冊だ。
 「政治の世界に入って分かったのは、改めて若い人は特に政治に関心がないということです。けれども実際僕らの世代は社会のために何かをしたいと実感はしているし、そういう人はたくさんいるのです。しかし既存の制度や仕組みでは商店会や業界団体などの〝大きな声〟が力を持っている。つまり若い人々にとっては、関わりたいのになかなかできないというギャップがあるのです。最初の一歩が難しい。そういう人たちに具体的にどう動けばいいのかを示したくて書いた本です」
 九・一一がきっかけでアクションを起こすことの大切さに目覚めた。「世界学生会議」を企画し、紛争地域を中心に各国の若者を日本に招いてディスカッションをするなど、動けば変わることを実感。大学卒業後は、より広く社会に訴えるツールを手に入れるために博報堂に入社した。
 最初に担当したのは自動車メーカーのプロモーションだったが、「一方で社会的課題をどうすればみんなに知ってもらえるか、そしてそれを解決するためのサービスをどのように提供していくかについての提案を常に考えていました。当時、会社としてはその領域はあまり手を付けていなかった。お金にはならないからです。しかし例えば地球温暖化のことについて世の中に認識してもらい、これを解決することに賛同してくれる企業を募ると、ちゃんとお金が集まるのです。商品ではなく社会的課題にお金がつくというキャンペーンが作れるようになっていきました」。その活動が軌道に乗り、社内では〝ソーシャル系社員〟と呼ばれていたそうだ。
 二〇一〇年に同社を退社。並行して所属していた、ゴミ拾いの活動を全国展開するNPO法人グリーンバードの代表に。そして翌年区議に当選する。「区議になったのはNPOでできることには限界があったからです。法律等を変えないといけないと思ったのです。例えばゴミ拾いであれば、実際ボランティアで実行してくれる若者がたくさんいるにもかかわらず、そこにはたくさん税金が投入されている。これ以外にも無駄にサービス化されている領域がたくさんあります。行政にお任せではなく、みんなの力で楽しみながらできることがもっとあるはずだと思った。自分たちの街を自分たちの手で作り上げていくことは楽しいよということを知ってもらいたいのです」
 氏は民主主義を三段階に分けている。1・0は行政にお任せ状態、2・0は大小の声を含めたあらゆるニーズをくみ上げて行政に生かせている段階、そして3・0はサービスの提供・享受の関係性が「協働」へとバージョンアップした段階。現在は〝1・5くらい〟と記しているのだが、そこから上位へ移行するために活用されるのがソーシャル・メディアだ。「みんなが参加して社会的課題を解決していくことと相性が良いのはマスメディアよりもソーシャル・メディア」と言う。氏にとって重要なのは、それは飽くまでもツールに過ぎないということだ。
 手段と目的をはっきり区別する姿勢はあらゆる場面において一貫している。
 「広告会社に入りたいと、今でも学生が訪ねてくるのですが、必ず広告をではなく、広告で何がしたいのかと言うようにしています。広告は目的ではなくて手段です。政治に関しても、同じことが言えます。政治を使ってどうしたいのかが重要なのです。政治という言葉が難しく響くかもしれませんね。〝自分は参加できない〟というか。しかしそもそも民主主義はみんなが参加するもの。敢えて〝参加型民主主義〟と言わなければならないほど、みんなが参加していない。政治とは、自分たちの街を自分たちの力で良くしていくという、とても身近なことなのです」
 参加を促すのは、「ファン。楽しいということです」。そう話す口調は、区議としての経験に裏打ちされている。「こうしなさいという義務的な命令では人は動きません。行政においては、公平性とか確実性ばかりが大事にされる。しかしみんなに良いものは楽しくないのです。やっぱりエッジが利いているものが楽しい。そういう発想が行政にはない。いつの間にか参加してしまうような〝ファン〟をどうやって作り出すか。楽しいという観点を切り口にしたら、今まで以上の人々に刺さるかもしれないですよね」
 本書は、読者の中に眠る〝アクションの種〟に確実に水を与えるだろう。それをどのように育むかは、それぞれの課題だ。「社会のために何かをしたいという人はとてもたくさんいます。だけどどうしたらいいかよく分からないという人に読んでもらいたい。身近なところからちょっと始めてみて、とにかく簡単だな、楽しいなと思ってほしいですね」







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