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評者◆秋竜山
「倍がえしだ!」なんてゾッとする、の巻
No.3136 ・ 2013年11月30日




■考えてみなくても、人前で、相手に対して、怒ったことが一度もない。その分だけ、どれだけストレスとなったことか、はかりしれないだろう。もし、カッ!! となってしまったとしたら、まずそんな自分にビックリしてしまうだろう。そして、くやむだろう。「どーして俺は怒ってなんかしてしまったんだろうか」。早い話が、私は気が小さい部類の人間かもしれない。
 向谷匡央『怒る一流 怒れない二流』(フォレスト出版・本体九〇〇円)と、いう本。ガマンなどしてないで素直に怒れ!!と、いう本である。私は思うに、元来、日本人の生き方としては、怒るな!! と、いうのが筋ではないか。子供の頃より、映画とか小説などで、ガマンにガマンをかさねて!!なんてのを読み過ぎてしまったせいだろうか。怒ってはおしまいだ!!みたいなものがある。
 〈吠えることも、噛みつくこともできず、曖昧に尻尾を振ってみせるだけのA君は結局、「負け犬」になったのです。〉(本書より)
 これを自分にかさねると、やっぱり俺は負け犬であったのか。「ああ……あの時。俺はみじめな負け犬でしかなかったのか……」なんて思ってしまうのである。
 〈あなたの周囲を見まわしてください。広く世間に目を転じてみてください。政治家、実業家、野球やサッカーの選手や監督、有能な上司、さらにヤクザからホスト、ホステスまで、成功している人は例外なく〝熱い人間〟のはずです。彼らは目的を遂げるために、夢を実現するために、立ちはだかる障害物に対して「そこをどけ!」と激しい〈怒り〉をもって蹴散らし、乗り越えて今日の成功を手にしているのです。〉(本書より)
 成功の一つには〈怒り〉というものも必要であるということか。しかし、どーしても私には怒りまでバクハツしなかった。怒った後の恐さが全部自分の身にふりかかってくるように思えたからであった。〈この世の中は弱肉強食です。〉という。この言葉を初めて知った時、実に不ユカイな気分になったものだ。こんな言葉があるということ自体がたまらない気がした。そして、どうやら自分は食べられてしまう側の人間なんだろうなァ!! と、考えてしまった。〈この世の中は弱肉強食です。これが現実です。〉この〈これが現実です。〉という言葉のヒビキには救いはないように思える。
 〈しかも終身雇用制が崩壊し、グローバル経済となったいま、リストラと隣り合わせて生きていかざるを得なくなってきました。怒ることのできない「草食系」は、もはや絶滅種になってきたのです。もし、あなたが「怒れない自分がイヤだ」と思っているなら、それは無意識に絶滅種となることに対する危機感のあらわれであると言っていいでしょう。〉(本書より)
 さあ、どーしましょう。「ヨシ!! これからは、この本を読んで、怒ることに専念しよう。」なんて、ものでもないだろう。でも、一読してみることもよいかもしれない。あの流行語にもなった「倍がえしだ!!」なんて、ゾッと身ぶるいがしてくるが、みんな言えないから流行語になったんだろう。変てこな流行語でもある。







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