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評者◆秋竜山
「ふぁい」という返事、の巻
No.3135 ・ 2013年11月23日




■田辺聖子編著『男と女は、ぼちぼち』(朝日新書、本体七八〇円)は、
 〈笑わせたり、心をほぐしたり、相手に届く言葉をどれだけ持っているか。人生の達人たちによる、大人のための生きるヒント。〉(オビ)
 と、いうわけだ。
 〈時実新子・川柳をやっていて思うんですけれど、夫婦のよさを詠めるようになるのは、六十歳くらいになってからなんですね。〉
 〈永六輔・うちもたまたま僕が笑わせるのが好きで、女房が笑うのが大好き。告知した当初から、本人が「とにかく楽しくいこう」と言うので、日々笑うことを最優先にしました。桂米朝さんが得意な「地獄八景亡者の戯れ」。あれが好きで笑い転げていました。
田辺 地獄と極楽を楽しむお噺、あれ、可笑しいですもんね。
永 命を肴にしてあんなに笑う噺はないでしょう。死んだ人たちがわいわい騒ぎながら三途の川を渡ると、たとえばあの世にも芝居小屋がある。「田辺聖子、〈源氏物語〉を語る」と看板が出てて、そこに「近日来演」と。ああ、近いうちにお聖さんもこっちにくるらしいよ(笑)。
田辺 本なら「近日刊行」ね(笑)。〉
 〈伊集院静・私の記憶には、「お正月の空は、なぜこんなに澄み渡っているんだろう」という思いがあります。大晦までの忙しなさが嘘のように、一夜明けて正月になると、風が運んできたような青空に晴れ晴れしい気持になりました。それと、身が引き締まるような寒さをよく覚えています。
田辺 そうね、昔の正月は本当に寒かったんですね。〉
 〈山田太一・山田 田辺さんが「違いがわかるうちはまだダメだ」とお書きになっていたけど、本当にそうですね。年をとると、だんだん違いがわからなくなってくる(笑)。
田辺 それに、笑いたくなりません? 何か深刻な顔で「違いがわかる」なんて言っているのを見ると、そんな大げさに言うことあらへんやないかって。〉
 〈川上弘美・田辺 昔の五十男と違って、今は体も心も若いから、五十代でも一見若げに見える、中身のある素敵な男がいるかもしれない。だけど四十代はまだダメね。今の四十代はそんなに大人じゃないもの。
川上 私を含めて、女も大人じゃない。昨日も三十代の女性記者と話したんですが、「大人になれない」と彼女は悩んでる。じゃあ上司はといえは、彼らも大人になっていなくて、「戦後に生まれた人たちは誰も大人になっていないのでは」と彼女は言うんです。〉
 〈小島ゆかり・田辺 漫才の台本も書いたことありますよ。吉本さんの、新人の人たちの練習用にね。(略)あれ、誰でしたっけ。「月給安いから、上げておくんなはれ」と社長室へ行った若手の芸人がいて、「もし上げてくれへんのやったら、ここから飛び降りる」。社長、「降りたらええがな。そんなん言うてきたの、おまえで三人めや」言うて(笑)。
小島 えーっ。〉
 〈沢木耕太郎・沢木 お母さんって、九十三歳の時に、「私は今まで何をしてきたんだろう」っておっしゃったという方ですよね。〉
 「返事でもね、『はい』っていうのと『ふぁい』とふたつあってね」と、田辺さんはいう。これには大笑いしてしまった。







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