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評者◆秋竜山
名人の追悼文、追悼文の名人、の巻
No.3133 ・ 2013年11月09日




■矢野誠一『さようなら昭和の名人名優たち』(日経プレミアシリーズ、本体八五〇円)を読む。〈名人・名優59人に捧げた、40年にわたる追悼譜〉(オビ)である。まず、死亡記事を新聞で読む。テレビのほうが、ちょっと早いだろう。新聞を手にとる。一番最初に見るのは死亡記事です。と、いうひとが多い。テレビ欄かと思ったら、そうでもないようだ。何十年も、まず死亡記事を見続けているという。なぜに死亡記事がそんなにミリョクがあるかというと、ひとの亡くなるということは、「エッ!!」とか、「まさか!!」とか、驚きがともなうからである。朝刊だと、一日の最初の驚きということになるだろう。死亡記事では、知らないひとのほうがおおい。肩書きで、どういう人物であるかが大体わかる。しかし、芸能人となると、まず知らない人はいないだろう。それだけに、ショックのような驚きである。新聞では、どれだけのスペースをさいて扱われているかで、そのひとの人気度をはかったりする。「アレ!! ちょっと、小さ過ぎないかア!!」なんて、のもあったりする。大き過ぎるということはなく、大きいほどよいだろう。同時に追悼文がのっていたりする。残念だろうが、亡くなった本人は自分の追悼文を読むことはできないだろう。
 〈これまでに書いてきた役者や藝人の追悼文をあつめたのが、この「さようなら昭和の名人名優たち」である。〉目次にはズラーッと桂文楽(一九七一年一二月一二日没)から、小沢昭一(二〇一二年一二月一〇日没)まで、五十九人の名人名優たちである。もちろん名前の知らないひとは一人もない。超一流人たちである。こういうひとたちの死亡記事や追悼文を読むと、必ず思ってしまうのは、「やっぱり、どんな偉い人でも人間である以上は死ななければならないんだなァ……」と、いうことである。ひとの死というものを実感させられるひとたちである。
 〈当然のはなしだが、追悼文というものは急ぎの原稿になる。初めて書いた追悼文で、本書の冒頭におさめた八代目桂文楽と柳家金語楼は、書きあげた原稿を電話口で読みながら送った。古今亭志ん生は「毎日新聞」学芸部の机を借りて、鉛筆で書いた。わが家の電話機がファクシミリ兼用のものになったのがたしか一九九三年で、それまではオートバイで取りに来てもらったように覚えている。そんな事情もあってか、いわゆる予定原稿を用意したがるところもあり、私は頑なに断ってきたが、なかには依頼に応じるひともいて、追悼されるひとよりも書いたひとのほうが先に逝ってしまい、幻の追悼文となってしまったケースもあったようにきいている。〉(本書より)
 〈一九八八年一月九日没73歳、――まさに壮烈な戦死を思わせた宇野重吉さんの最後の舞台は、日本橋三越劇場で上演した武者小路実篤作「馬鹿一の夢」であった。(略)この講演の千秋楽の一二月二四日、ということは文字通り宇野さんの最後の舞台を観たのだが、(略)〉(「日本橋」1988・3追悼文より)
 私は、客席の暗がりで、この舞台をスケッチしていた。矢野誠一さんの一流の追悼文には愛情がこもっている。
 〈追悼文を書き終えたとき、きまって言いようのない寂寥感に襲われる。〉(本書より)。







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