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評者◆秋竜山
考えてばかりいる人?、の巻
No.3131 ・ 2013年10月19日




■「知的」ということばは魔力を持っている。あこがれ、というか。「あの人は、知的だ」とか、「知的でない」とか。「知的な顔をしている」とか。言われたヒトは、気分がいいだろう。「知的でない」と、いわれたら、どーしましょう。そりァ、誰だって、「知的だ」と、いわれたいに決まっている。苅谷剛彦『知的複眼思考法――誰でも持っている創造力のスイッチ』(講談社プラスアルファ文庫、本体八八〇円)も、同じ本の二度買いであった。昔、買っている。そして、又、今度も、なぜ? 昔、買って読んだのを忘れていたから。私の読書ってその程度のものか。しかし、考えてみれば二度買いさせてしまう力をもっているってことか。やっぱり、「知的という本のタイトルにまたもや、だまされたのか」と、いうことだ。
 〈「常識」にどっぷり浸かったものの見かた・考えかたは、「単眼思考」と呼ぶことができます。世間で何度も使い回され、通用しているものの見かたは、まさに、ものごとの一面だけに目を向ける単眼思考です。その時点で自分なりの考えを放棄してしまうと、そこで見落とされたことがらには目が届かないままに終わります(略)〉もしかすると私などは、この文章からいって単眼思考者なのかと思えてしまう。
 〈こうした単眼思考に対し、ありきたりの常識や紋切型の考えかたにとらわれずに、ものごとを考えていく方法ー私はそれを「知的複眼思考法」と名づけたいと思います。〉(本書より)
 単眼思考に対して、複眼思考か。そして、この複眼思考に、「知的」を加えたのが、本のタイトルというわけだ。「知的」に弱い者にとっては、とびつくに決まっている。とびつかざるをえないのである。どーしたら、「知的複眼思考法」を身につけることができるか。「知的」になれるか。もし、これが、「知的」ということばが入らず「複眼思考法」というだけだったら、どーなるんだろうか。買わせる力を持っているだろうか。そして、こーも考えてしまう。「単眼思考」というのに「知的」という文字を加えて、「知的単眼思考」としたらどーだろうか。やっぱり私などは手に取ってみたくなってしまうだろう。そーだ。いっそのこと「知的単眼思考法」と「知的複眼思考法」というタイトルにして、書店に並べて置いてみたら。二冊いっぺんに、オーラが出て浮かびあがるかもしれない。と、いうことは、同時買いが生ずるだろう。それくらい、「知的」という言葉には負けてしまうのである。
 〈考えるという行為は、その考えが何らかのかたちで表現されてはじめて意味を持つものです。よく会議などで、腕組みをして目をつぶり、何もいわずに黙ったままの人がいます。思慮深そうに見えるものですから、何もいわない分だけ、きっとすごいことを考えているに違いない、と思ってしまうこともあるのでしょう。(略)しかし、頭の中で、どんなにすごいことを考えていたとしても、それを他の人に表現しないかぎり、その考えは、ないに等しいのです。〉(本書より)
 いるいる、そんなヒト。なんだ、そーだったのか。考える人、だけでは駄目だってことか。ロダンの「考える人」は有名である。しかし、考えてばかりいる考えている人だ。そこで、言葉を発しなければ。そんな思いであの「考える人」を見てしまったら、それはかわいそうである。







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