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評者◆秋竜山
怒るにも才能が必要、の巻
No.3129 ・ 2013年10月05日




◆昔のマンガに「クソッ」と、いいながら、道ばたの石コロをけっているのが多くあった。腹がたった時のウップン晴らしだ。この程度の怒りであっただろう。凸凹道の頃、石コロも沢山あった。今の道は石コロのないコンクリートで、石コロをけっとばすこともできない。アゝ、あの頃はヨカッタなァ!!とは、昔を知っているヒトの溜息。片田珠美『なぜ、「怒る」のをやめられないのか――「怒り恐怖症」と受動的攻撃』(光文社新書、本体七六〇円)では、
 〈怒りを感じたら、どんどん出してみるべきなのだ。怖がらずに。怒りを見つめ、それを出してみることによって、はじめて、怒りを明日生きてゆくエネルギーにすることができるのだということが、わかるはずである。〉(本書より)
 怒ったら、おしまいだ。と、自分にそのたびに言いきかせ、しずめたり殺したりしている。そんなヒトが多いかもしれない。怒りたいことが山ほどある。まず時間だ。時間さえたてば、解決してくれる。
 〈怒りは、ぎりぎりまで我慢して、辛抱しきれなくなったから出すようなことをしてはいけない。ゼロか百かでなく、中間の五〇~七〇くらいで出すように工夫すべきである。もちろん、日頃から、怒りを出せるような人間関係を築いておくことも必要だ。〉(本書より)
 特に日本では、自己主張を抑えつけようとする教育がされてきたようだ。短気は損気ともいった。「まったく、お前は、誰に似たのか短気で困ったものだ」。そういう親父に似たのだということ。
 〈人は、怒り、敵意、恨み辛み、憎しみ、やっかみなどの、負の感情を抱えていて当たり前なのであり、そういうものだとあきらめる=明らかに見るしかないと言うべきか。要するに、「醒めて、怒れ!」ということだ。これは、寺山修司が「一日一怒」を勧めているエッセイのタイトルだが(家出のすすめ、角川文庫)、筆者がこの本で、さまざまな事例を紹介しながら延々と述べてきたことは、寺山のこの言葉につきる。〉(本書より)
 「一日一怒」とは、そーとーにエネルギーのいることだ。なにを怒るか!! と、いうことだ。くだらんことばかりの毎日をすごしている私にとっては、いくらなんでも、そんな中での怒りを爆発させようとしても、無理というものだ。いかにして怒るかにも問題がある。怒るにも才能を必要とする。「お前、そんなことで怒って、どーする」なんて、いわれたとしても、自分にとっては、重要なことだったりするものだ。怒りたいけど怒れない。これでよしとする人生をおくるしかないか。〈置換え‐本人の代わりに犬をける」〉ということである。
 〈ある人に対する怒りを間接的に表現するために、別の対象に怒りをぶつける、という手法もしばしば用いられる。(略)相手の面前で、「犬をける」ような人もいるが(略)〉(本書より)
 犬はいいメイワクである。昔は石コロであったが、その石コロのかわりをはたしているのか。だとしたら、犬が気の毒である。新聞に「半沢直樹」42・2%、視聴率民放ドラマ4位とのっていた。平成の民放ドラマではトップとなった、という。池井戸潤さんの小説が原作で、「倍返しだ!」というセリフが有名になった。これも怒りの物語である。そして、最後にしっぺ返しをくらって、あまりにも後味がよくない。そして、視聴者の誰もが「世の中ってそーいうものだよ」と変にナットクさせられてしまった。







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