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評者◆阿木津英
文学活動の場としての結社と、短歌商業誌の使命――結社「白鳥」の終刊と、短歌雑誌「現代短歌」の創刊
No.3128 ・ 2013年09月28日




◆明治期、新派和歌台頭の時期の「明星」「創作」などは、短歌を中心とした文芸誌で、市販された。現在のような会員雑誌になるのは、それぞれ新派歌人の旗幟が鮮明になってくる大正初期からである。
 それ以来、結社は、文学活動の場としての側面と、勢力拡張をのぞむ組織体としての側面とを併せもってきた。戦前の「アララギ」は、前者のみならず後者においても強力でありすぎてとかく批判の的となったが、一方、結社間雑誌としての短歌商業誌を眼中におく必要もなかった。短歌商業誌に依存しなかった。
 ひるがえって現在を一言でいえば、短歌商業誌の権威が結社誌を上回り、結社は組織体としての側面を肥大化させている。まことに今日的な状況ではある。
 しかし、何よりもわたしたちは創作者ではなかったのか。無償の、「生」に対する、「神」に対する仕事を行うものではなかったのか。そういう反省は、このような時代のなかにも伏流水のようにながれ続けている。
 このたび成瀬有追悼特集号をもって十九年間にわたる活動を閉じる歌誌「白鳥」は、まぎれもなくその一つの水脈であった。岡野弘彦主宰「人」解散後に生まれた成瀬有を中心とする歌誌「白鳥」は、小誌ながらつねに文学的刺激を発信する雑誌だった。「「白鳥」は成瀬有一代のもの」として記念しつつ、後記にはすでに新しい芽吹きの強さが感じられる。よく死ぬものは、よく再生するであろう。
 また、この九月、短歌商業誌として「現代短歌」が創刊された。これで「短歌」「短歌研究」「歌壇」「短歌往来」に加えて五誌となる。「NHK短歌」などを含めれば、狭い歌壇には供給過剰ではないか。
 不思議に思うのだが、これまで結社の弊害についてはさかんに議論されてきたのに、短歌商業誌の弊害について表だった議論は聞いたことがない。金太郎飴、How toものばかり、と言った囁きは聞くが、短歌界の重要な構成要素としての短歌商業誌についての位置づけや使命に関する議論はあっただろうか。じつは供給過剰ではなく、真の需要に応え切れてないのではないか。新雑誌「現代短歌」がその先鞭をつけることを期待したい。







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