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評者◆秋竜山
相手の笑いをよむということ、の巻
No.3123 ・ 2013年08月17日




 日本語研究会編『よくわかる使いやすいことわざ・故事・俗言辞典』(本体九五一円・同文書院)を読む。読んだら使いたくなる。有名なことわざを使ったって「なるほど」とは思われない。むしろ、うっとうしくなったりするものだ。誰もしらない聞いたことのないことわざが話の中にポンと出ると「オッこいつ」となる。〈雨降って地固まる〉などは、笑われてしまうほど有名だ。だったら〈嵐の後には凪がくる〉だったら、「ホー」ということになる。その逆に〈雨晴れて笠を忘る〉というのがある。
 〈雨がやんで天気がよくなると、今まで役に立った笠のありがたさを忘れてどこかに置き忘れてしまうように、苦労を乗り越えて楽になると、それまで受けた人の恩義をすっかり忘れてしまう。人間の身勝手さをたとえたことば。類、暑さ忘れて蔭忘る/喉元過ぎれば熱さを忘れる〉(本書より)
 というのがあるが、〈雨降って…〉の、かわりにはならないだろう。本書は〈いろは順〉に、様々なことわざが続く。
 〈長い歳月に渡って人から人へと言い伝えられてきたことばであり(略)先人の体験による生活の知恵、処世訓、人生訓などが凝縮されています。〉(本書より)
 私は〈笑い〉にまつわることわざを抜き出してみた。
 〈言い出しこき出し笑い出し。臭いぞと言って最初に笑い出した者こそ、おならをした張本人であるということ。あれこれ手を回し過ぎてかえってあやしまれ、ひた隠しにしていたことを自ら暴露してしまうことのたとえ。〉〈家泣きの外笑い。家の中でぼやいてばかりいる者が、一歩外に出ると、人が変わったようにおおらかになること。転じて、外面と内面が全く異なる人をさす。類、内閻魔の外恵比須〉〈怒る拳笑顔に当たらず。怒りを発して拳を振り上げても、笑顔の前には拳のやり場がなくなる。類、尾を振る犬は叩かれず〉〈えせ者の空笑い。いかがわしい者、軽薄な者は、おかしくないことでも声を立てて笑い、人に媚びへつらって相手の機嫌をとろうとする。そうした行為を嘲笑したことば。類、えせ侍の刀いじり/曲者の空笑い/世辞で丸めて浮気で捏ねる〉(本書より)
 相手の笑いをよむということ。それだけに笑いというものは、むずかしく軽々しく笑えないものである。こっちが好意的に笑ったとしても、相手がそうはとらないこともある。「いやいや、この笑いはそーいう笑いではなく、こーいう笑いです」なんて説明するのも、また別のイヤ味になってしまうものだ。「だったら始めっから笑うな!!」と、いうことになるだろう。〈顔で笑って心で泣く〉は有名だ。
 〈げらげら笑いのどん腹立て。げらげらと笑っていたかと思えば、急に腹を立てること。感情の起伏が激しい人のたとえに用いる。「げらげら笑いの仏頂面」ともいう。〉〈猿の尻笑い。サルが自分の尻が赤いことも気づかずに他のサルの赤い尻を見て笑うこと。自分のいたらぬ点を棚に上げ、他人の欠点を嘲笑することのたとえ。「猿の柿笑い」「猿の面笑い」ともいう。〉(本書より)
 ほかにいっぱいある。サテ、この〈ことわざ・故事・俗言〉の笑いに関することは、いったいどのような場面で使うべきか。気のゆるせる相手と酒でものみながらってことになるか。〈我が面白の人泣かせ。他人にとってみれば迷惑な場合もある〉ということだ。







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