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評者◆秋竜山
乱獲が好きなヒト、の巻
No.3121 ・ 2013年08月03日




 先週の本(鈴木光太郎『ヒトの心はどう進化したのか――狩猟採集生活が生んだもの』〔ちくま新書、本体七八〇円〕)を今週も。と、いうのも、私にとって考えてみたこともないことが書かれてあったからである。「そんなこと、当たり前だろう」と、いわれればそれまでの話だ。しかし、私には思ってもみなかったことだ。大発見だ。
 〈「石器時代」という名称は、私たちの祖先がもっぱら石器だけを使い、それに頼り切っていたという印象を与える。しかし、この印象はおそらく誤りだ。石器が多く出土するのは、それが腐ることなくそのまま残るからである。当然ながら、彼らも、植物や動物などから得られる素材も使って、さまざまな道具を製作していたはずである。しかし、それを示す証拠が見つかることはまずない。時代をさかのぼればさかのぼるほど、それらの証拠が腐朽せずに残る石の遺物であり、それにもとづいて、その時代のヒトの能力や生活について推測をめぐらすしかない。〉(本書より)
 石器時代という名称は罪深いものがあるように思う。なぜならば、この時代の石器人というか原始人は、石の中で生活しているようにイメージさせられてしまうからだ。石器時代という名称の力は石以外のすべてを消しさってしまうものがある。たとえばだ。石器時代の地球は石のカタマリだけでできている。風景はすべて石。石以外になにもない。早い話が石を食べているとさえ思えてくる。それまでは思えないが、石器人が石以外のものを食べているとまでは考えがいたらないのである。もしかすると石器人は石でできているのだろうかとさえ思わされてしまうほどである。マンガのパターンに、「原始人もの」という万国共通のものがある。化石人類の名称としてホモ・ハビリス(器用なヒト)、ホモ・エレクトゥス(直立するヒト)と、いわれているようだけど、石器時代のヒトを頭の中に描くとしたら、必ずマンガに出てくるヒトであるだろう。棒の先に石をくくりつけて、肩にかついでいる。マンガにおける原始人は、女性の長い髪の毛を手でつかんで引っぱっている。これは男性が女性に求愛して成功したことを意味するということだ。女性は引きずられながら、うっとりした顔をさせている。これも有名な男と女のいとなみである。本当にそうだったんだろうか。実際に誰もみたことがない。でも、マンガでそう描かれると、そーいうものだったってことになってしまうものだ。
 〈最初期は、250万年前頃のものが見つかっている。オルドワン式と呼ばれるこれらの石器は粗雑に加工されたものだった。170万年前頃になると、製作に何段階もの工程が必要なアシューリアン式の石器が登場するようになる。〉(本書より)
 そして、驚かされるのは、
 〈数万年前になると、槍や矢(いわゆる飛び道具)は、返しのついた尖頭器(刺さると抜けにくくなる)をつけたり、毒を塗ったりして、殺傷力を高めたものが現われる。〉〈この頃にユーラシア大陸北部にいたマンモスやホラアナグマなどが絶滅してしまうのは、氷河期末期の気候変動の影響によると考えられるが、それらの強力な道具を用いて乱獲が行われたことも絶滅の一因だったのかもしれない。〉(本書より)
 ヒトというものはその当時から乱獲ということが好きだったようだ。







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