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評者◆秋竜山
感動しないわけにいかない、の巻
No.3120 ・ 2013年07月27日




 鈴木光太郎『ヒトの心はどう進化したのか――狩猟採集生活が生んだもの』(ちくま新書、本体七八〇円)を読む。本を読むということは、〈寒さ〉と〈暑さ〉と、どっちが適しているのか。もちろん、頭の中が、ということだ。冬の寒い時は頭の中はボワーンとはしないが、夏の暑さでの頭のボワーンはもうどーにもならない限界だろう。何ページも活字をおっていて、「ハッ!!」と我にかえる。「ハテ? 何が書いてあったんだろう。ハイ!! もー一度読みなおし」。本書を読みながら、さっきから私は本書とはまったく関係ないことで頭の中をいっぱいにしているように思う。それは「食っちゃ寝」という言葉だ。
 〈分子進化学(生物間のDNA等の塩基配列の違いから、生物の類縁関係や種の分岐年代を研究する科学)での研究から、ヒトとこれらの大型類人猿の分岐年代が明らかにされている。古いほうから順にあげてゆくと、約1300万年前、オランウータンの祖先と、ゴリラ・チンパンジー・ヒトの共通祖先が枝分かれした。その後、約700万年前に、ゴリラの祖先と、チンパンジー・ヒトの共通祖先が枝分かれし、約600万年前に、チンパンジーの祖先とヒトの祖先が枝分かれする。〉(本書より)
 私の頭の中は、つまり、これらの祖先が数百万年前から、「食っちゃ寝」を繰り返してきたということだ。「食っちゃ寝」をおこたることなく数百年前も前からよく引きつがれるように続けられてきたこと。食べるということは口から入れたものを肛門から出すという作業の繰り返しであるということだ。何かの本で読んだことがあったが、赤ちゃんが生まれたばかりの時、大腸と肛門はまだつながっていないということである。つまり、ウンコは大腸から肛門へと自力で道を切り開きながら突進していって、ポトリと外へ飛び出るというのだ。そんなことが、数百万年前から延々と行なわれていたのだと思うと感動しないわけにはいかないのである。なぜ、最初っからこのように大腸と肛門とがつながっていないのか、考えられない。それにはそれなりの理由があるだろう。
 〈ヒトとチンパンジーの共通祖先がいたのは、東アフリカの大地溝帯と呼ばれる地域の赤道近くである。いまのケニアやタンザニアあたりだ。この地域からは、ヒトの祖先と考えられる化石や遺物がみつかる。ここで人類は誕生し、その幼少期を過ごした。いわば「ゆりかごの地」だ。近くでは、チンパンジーの祖先が森林で樹上生活を送っていたが、一方、この私たちの祖先は、気候の乾燥化によって森林がサヴァンナ化しつつあった場所で生活するようになっていた。〉(本書より)
 これも本書とはまったく関係のないことが頭の中を支配してしまった。子供の頃、山川惣治という作家の絵物語による「少年ケニア」という作品が新聞で連載された。今は絵物語などというものはなくなってしまったが、当時は絵物語の全盛でみんな熱狂した。ケニアのジャングルで日本の少年がゴリラに育てられるという熱血冒険絵物語というものだった。同じ作者で雑誌に「少年王者」という作品もあり、これも日本中の少年たちをわかせた。作者はケニアを舞台にしたのは「ゆりかごの地」として意識したのか。それともグーゼンにできた作品なのか。今になってみれば、やっぱりすごい作品だったんだなァ。







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