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評者◆秋竜山
マンガの文体は画風にあり、の巻
No.3119 ・ 2013年07月20日




 長谷川町子『長谷川町子思い出記念館』(朝日文庫、本体七〇〇円)は、かなり昔に出版されているが、今また買って読む。興味あればこそだ。テレビのアニメを見た子供が、昔の新聞のマンガを見て、どーして同じマンガであるのに、こんなにも似ても似つかぬマンガ同士であるか不思議に思ったという。どのように答えればよいのだろうか。どっちかがニセモノとはいわないが、くらべてみると、やっぱり違う。どちらかが面白くないのなら軍配はあがるのだろうが、どちらも面白く、味わいをもった作品になっている。文句のつけようがないと、私は思っている。それでも、ギモンに思った子供も間違ってはいないと思う。同じ作品でありながら、まったく画風が違うからである。マンガの文体は画風にあると思う。そして、四コママンガのサザエさんは新聞マンガであり、動かないマンガ。テレビのアニメは動くマンガ。そして声も出る。その違いだろう。なんていうと実に初歩的な解説であり、このようなことは赤ン坊だって知っている。
 長谷川町子さんが、新聞のサザエさんを終えた後、日本漫画家協会の賞をうけることになった。当日の会場では「どーやら、長谷川町子さんが出てくるらしい!!」「考えられないことだ」なんて、いいあった。長谷川町子さんといったら、マンガ家仲間では誰一人として見たことがなかった。あまり人前に出たくないからだと思う。それ以外に考えられなかった。あまりにも国民的マンガ家になり過ぎたせいだったのか、いずれにしろ、人前に出たくないものは、こっちがいくら拝ませて下さいとお願いしたところで、かなえられるものではないのである。本当に出席していただけるのか。とにかく、会場に姿をあらわせていただけたことでお見えになりましたということになる。「オイ!! まだお見えにならないのか」。とにかく、ひとめみたいと、首を長くしていた。長谷川町子さんがお見えになりました。その時、あるマンガ家が、「動く長谷川町子さんをはじめて見た」と、感動して声をふるわせたということだった。よく考えてみたら、長谷川町子さんはみんなの前でアニメになったということである。とにかく動いていたのだから。実はその当時の会場へは私は残念ながら仕事の関係で行けなかった。後で聞いた話ですけど。
 〈「サザエさん」を抜いては長谷川町子さんの存在は考えられないわけだが、あまりにも〝サザエ〟の殻に閉じこもり過ぎて、自由を失ったのではなかろうか。さらに大きな才能の可能性を秘めている人のように思う。〉(「週刊朝日」昭和五十三年五月五日号記事・横山正男記者より)
 子供の頃の単行本化されたサザエさんを見ながらゲラゲラ笑いころげたものだった。「ワー!! 面白過ぎる!! 面白過ぎる」と繰り返し読んだ。読み終えると次々とまわした。持ち主は誰だかわからない。だから、まず一度も表紙のあるサザエさんはなかった。表紙はなかったがサザエさんであることはわかった。表紙のないということは、まわし読みしている内にどこかへ行ってしまったということだ。今どきそんな本ってあるだろうか。







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