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評者◆編集部
こどもの本棚
No.3119 ・ 2013年07月20日
わたしの「たびする目」はもっとすてきになる
▼わたしのすてきなたびする目 ▼ジェニー・スー・コステキ=ショー作/美馬しょうこ訳 わたしはうまれたときから左目が斜視で、ともだちからは「イグアナみたい」ってからかわれることもあるけれど、ぜんぜん気にしない。わたしは「たびする目」っていってるの。だって、目がいくところに、わたしがついていくんだもん。うえにも、したにも、いろんなはっけんができる目なんだけど、ときどき学校で、まどのそとばかり見ないようにって先生にしかられる。そしてある日、目医者さんにちりょうにいったほうがいいっていわれちゃった。 目医者さんのデイブ先生は、「きみの左目は、まちがいなく、なまけちゃってるね。目にやる気をださせて、それからまっすぐみられるようにしてやらないといけないな!」といって、左目にまるいばんそうこうをはりつけた。おおきくて、ぶあつい、あかいメガネもかけなきゃいけなくなった……。でもだいじょうぶ。「たびする目」がつよくなって、もっとすてきな目になるまでのお話です。(6月刊、29cm×24cm 四〇頁・本体一六〇〇円・偕成社) 恒久の平和を願った丸木夫妻のメッセージ ▼平和をねがう「原爆の図」――丸木位里・俊夫妻 ▼楠木しげお著/くまがいまちこ絵 代表作「原爆の図」で知られる画家の丸木位里・俊夫妻は、四〇年以上にわたって原爆や戦争の絵を描き続け、原爆の脅威や戦争の愚かさを伝えてきました。この本は「原爆の図」を中心に、丸木夫妻の歩みと画業をたどるとともに、夫妻の平和への願いを伝えたものです。 丸木夫妻は原爆投下直後の広島で、地獄のような惨状をまのあたりにしました。そして敗戦後、協力して「原爆の図」の制作にとりかかります。第一部「幽霊」が完成したのは一九五〇年二月のことでした。そうして連作を重ね、八二年の第一五部「長崎」まで続きます。 それだけではありません。丸木夫妻のテーマはアウシュヴィッツや南京大虐殺、水俣や沖縄へと広がっていったのです。戦争の悲惨さを描くことで、恒久の平和の尊さを伝えようとした夫妻のメッセージが、この本には込められています。(12・3・31刊、A5判二二〇頁・本体一五〇〇円・銀の鈴社) 五七五のことばのワンダーランド ▼ことばであそぼう五七五 ▼内田麟太郎 作/喜湯本のづみ 絵 俳句の五七五のリズムが、だじゃれのようなゆかいなことばへと大変身します。まずは、たかげた。 たかげたで げたげたげたと タカわらい 一枚の絵があります。そこに描かれているのは、闇夜を飛ぶピンクのガです。そこで一句。 チョウへただ がかにたずねる これは、ガか? ゆかいな絵にさそわれて、ことばあそびが続きます。ことばのワンダーランドへといざなう絵本です。(6・10刊、27cm×22cm三二頁・本体一三〇〇円・WAVE出版) 暑い夏にたべるすいかはさいこう! ▼すいか! ▼石津ちひろ 文/村上康成 絵 暑い夏がやってきました。すいかがおいしい季節ですね。うららちゃんとだいちくんが、真っ青な空のしたで、おじいちゃんのすいか畑にやってきました。どれどれ、味見してみるか。おじいちゃんが、すいかをポンとわると、中はまっ赤っか。うわー、おいしそう。あまいかおりがただよいます。 おじいちゃんもうららちゃんもだいちくんも、みんないっせいにガブッ、シャリシャリ。もうすっかりむちゅうです。いっしょうけんめい、かみくだいて、かいじゅうみたいに、かぶりつきます。 いつのまにやら、すいかをたべているみんなが、赤くなって、すいかになっちゃいそう。よーいどんで、口からいっせいに種をブブブブブっと飛ばします。 暑い夏には、あまーいすいかがさいこうにおいしい! おもわずたべたくなる絵本です。(5・17刊、27cm×22cm三二頁・本体一四〇〇円・小峰書店) 奴隷貿易の商人が美しい賛美歌を作るまで ▼アメージング・グレース――光と希望を! 絶望から救われた奴隷商人の物語 ▼中澤幸夫 賛美歌「アメージング・グレース」の作詞者ジョン・ニュートンは、奴隷貿易に携わる奴隷商人だったのです。そんなニュートンが、なぜ奴隷貿易廃止運動に加わり、人びとに愛される美しい讃美歌をつくったのでしょうか? この本は、ニュートンの人生をえがきながら、それをとおして人間の良心、正義、信仰の意味を考える物語です。 一八世紀のイギリスは海洋貿易で栄えていました。奴隷貿易も盛んで、ニュートンも奴隷商人の一人でした。神様を信じず、神様を呪ってばかりいたニュートンですが、嵐に遭って遭難しかかり、悪魔の誘惑をくぐるなかで、信仰の道へと進みます。そうして牧師となって、奴隷貿易廃止運動に加わるようになったのです。 美しい賛美歌をつくるにいたった、ニュートンの数奇な人生の物語です。(6・2刊、四六判二二四頁・本体一二〇〇円・女子パウロ会) おかあちゃんと歩いた旅の行く先 ▼はじめての旅 ▼木下晋 文・絵 六さいになったとき、おとうちゃんの留守に帰ってきたおかあちゃんは、「かあちゃんといっしょにいくか?」とぼくにきいた。しばらくとうちゃんと二人でくらしてきたぼくは、おかあちゃんといっしょにいられるのがうれしくて、「うん」といっていっしょに出発した。 でも、おかねがなくて、でんしゃにのることができないので、ずっとあるいた。おかあちゃんは町の食堂で皿洗いの仕事をして、お金をすこしため、また旅をつづけた。でも、何日も何日もあるいていくと、またお金がなくなってしまった。ぼくはおかあちゃんに手をひっぱられ、ときにはおぶってもらった。 どれほど歩いたことだろう。ついにたどりついたのは、小さな墓地だった……。日本を代表する鉛筆画家がえがいた、子どものころの貧しくもあたたかい、珠玉のお話。(6・20刊、24cm×32cm三二頁・本体一五〇〇円・福音館書店) |
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