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評者◆小嵐九八郎
やったのか、やっていないのか?──よど号グループ著『「拉致疑惑」と帰国――ハイジャックから祖国へ』(本体一八〇〇円・河出書房新社)
No.3118 ・ 2013年07月13日




 幾度か癌の手術をして踏み越えているニュースキャスター、コメンテイターの鳥越俊太郎氏が〝挑発し緊迫する北朝鮮〟というイメージの中、三月(たぶん)に平壌に行き、〝よど号グループ〟に直接会って取材をしてきた。鳥越氏自身は、「検証 過去に何をし、現在は何をしているのか」の10頁ほどの文章しか記していないが、少なくともその〝眼〟を何らかの形で通したはずの〝よど号グループ〟の小西隆裕さん、若林盛亮さん、森順子さん、黒田佐喜子さん、魚本公博さん、赤木志郎さんの文章が記されている本が出た。『「拉致疑惑」と帰国──ハイジャックから祖国へ』(河出書房新社、本体1800円)がそれだ。
 〝よど号グループ〟とは、あの我我を仰天させ、新左翼の運動の後退期をもしかしたら飛躍させるのかとも思わせた、一九七〇年三月の共産同赤軍派の闘いと北朝鮮へと〝根拠地〟を求めたメンバーを中心とする人人だ。このうち、魚本さん、森さん、黒田さんは、ヨーロッパを旅する日本の何人かを「結婚目的誘拐」したとの容疑で国際指名手配されている。
 つまり、この本の要は、ハイジャック闘争と、以降の北朝鮮での暮らしも然ることながら、「やったのか、やっていないのか」というところにある。ヨーロッパを旅していた普通の人達の石岡享さん、有本恵子さん、松本薫さんを「拉致して、北朝鮮へ連れて行った」のを「やったのか、やっていないのか」だ。
 俺もこの件で、十年前に本を出していて、心証は〝黒に近い〟と書いていて、責任が皆無ではなく、気になる。〝よど号グループ〟の心を考え直さなくてはならないからだ。〝原発安全神話〟にいつの間にか洗脳されかかっていた当方でもある。イラクへの侵犯でも〝恐ろしい化学兵器〟が口実になっていたが、あれは悪質なCMなのに、恥ずかしい……。
 鳥越氏は「警察や公安当局が(中略)拉致ストーリーを作ったのではないかという印象」と書いていて、うう。ラストの座談会で小西さんは「僕ら面も指紋も割れているのに、北朝鮮が拉致に使うか」の旨を語っていて、説得力があり、うう。でも、なお、なお……。
(作家・歌人)







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