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評者◆秋竜山
ひとごとではない余計な一言、の巻
No.3116 ・ 2013年06月29日




 アァ……。なつかしき、その昔。本というものに表紙などというものはなかった。始めはあった。しかし、いつの間にかなくなってしまっていた。まわし読みしている内に、表紙のない本になってしまった。それでも、みんな夢中になって読み、次へとまわした。面白い本は、そんな運命を背おっていた。なんて、ことを想いうかべたりしていた。山田敏弘『その一言が余計です。――日本語の「正しさ」を問う』(ちくま新書、本体八四〇円)の、その本の表紙のタイトルに「すごいこと考えるものだなァ……」と、感心する。私の「アァ……。なつかしき、その昔。」なんて、まさに、その一言が余計です。その一言が余計です。と、聞いただけで、まず連想するのは、大物政治家たちである。「バカヤロー」と、どなった吉田茂こそ、たしかにその一言が余計であった。いや、まてよ、その余計な一言の発言によって、今の日本の姿があるのかもしれない。大物政治家になればなるほど、「その一言が余計です」ということで、もったいないことをしてしまう。もう一言でいいわけするということはありえない。本書は、このような政治家たちをとり上げているわけではない。〈ほんの小さなひとことに人は傷ついて〉という、余計な一言である。〈「コーヒーで」とは何だ!!〉〈「おめでとうございました」で祝意も終わり?〉〈この料理、見た目はいいね」という真っ向否定〉など、身のまわりには、その一言の余計というキケンな中にあるようだ。テレビなどのお料理番組の中で、必ず「うまい」で、しめくくっている。観ている者の誰も信じてはいない。「うまい!! と、いうことは、まずい!! ということだね」と、子供がいう。どーだろうか、こんなタレントさんはいないだろうか。食べた後、「この料理、見た目はいいね」と一言。その次の番組から姿が消えてしまったら、どーしましょう。
 〈「この料理、見た目はいいね」という文について考えてみましょう。「この料理」が主題です。この場合、「見た目は」の「は」が、特に音声的に強められればやはり対比の意味を持ちます。つまり「見た目以外はだめ」との暗示をすることになるのです。〉(本書より)
 ところで、〈見た目は悪いね〉と、なったら、どーなるのかしら。
 〈はじめから他人を怒らせようと意図したことばであればともかく、本意ではないのに人を怒らせてしまう表現を、私たちは往々にして使ってしまいます。その怒らせることばの多くは、「余計な一言」です。〉(本書より)
 余計な一言と、いうのは、後になって、ハッ!! と気づく。なんて俺はバカなことを口走ってしまったのだ。と、くやむ。俺の本意ではない!! これは、神が言わせたのだ。なんて……これも余計な一言である。これも余計な一言かもしれないが、ある人は、最近、仲間と一緒に酒を飲まなくなった。理由は、酒の勢いで余計な一言を言ってしまうというのである。それが、酒のさめた後気づく。酒のせいにもできないだろう。よくよく考えてみると、その一言というのは、要するに余計なことであるというのだ。「アァ……今日も、余計なことを言ってしまった。」と、その日の日記に書く。それが余計かもしれない。







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