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評者◆秋竜山
お化けと、お笑い、の巻
No.3115 ・ 2013年06月22日




 三歳の子がいうには、お化けは、「お化けだぞー」と、いってあらわれるというのだ。そして、その子も、紙袋などをかぶって、「お化けだぞー」などと声を出して、お化けのマネをしている。お化けというものは不思議な存在だ。本物のお化けを見るには料金はタダであるだろう。そして、ニセ物のお化けを見るのに有料であるというのだ。有料だからこそニセ物でも見たくなる。ニセ物のお化けは無料だったら見たくもないだろう。五味弘文『お化け屋敷になぜ人は並ぶのか――「恐怖」で集客するビジネスの企画発想』(角川oneテーマ21、本体七二四円)を読む。著者は、お化け屋敷プロデューサーという。こーいう職業もあるのだなァ!! と、あらためてナットクする。本物のお化けを見せてお金をとる、というわけではない。ニセのお化けでお金を稼ぐ商売だ。だからといって、今まで、「ヤイ!! 本物のお化けではないではないか!!」なんて、いわれたことはないと思う。はじめっから本物を見られるなんて期待するほうがバカである。ニセ物だからお金をとれるのであって本物だったらお金をとるなんて、人間性をうたがうだろう。
 〈お化け屋敷に対するお客様の判断基準は、シンプルで明確である。「怖い」か「怖くない」か、である。怖いお化け屋敷に価値はあるが、怖くないお化け屋敷には価値はない。お客様は怖い体験をしようと思って入場料を支払うわけだから、その欲求に応えていないものはお客様にとって価値のないものである。〉(本書より)
 他のエンタテインメントの場合は、「面白い」「つまらない」という二つの価値規準に分けてしまうことはほとんどしない。と、著者は述べている。映画でも、音楽でも、ショーでも、演劇でも、同様である。と、いう。
 〈ところが、お化け屋敷の場合、評価する要素は非常にシンプルである。「怖くなかったけどセットがよかった」とか「怖くなかったけど人形がきれいだった」というようなことはまず言わない。「怖くなかったけれど好き」などという評価も出ることはない。「怖い」か「怖くない」かのいずれかしかなく、それがすべての価値基準なのである。このようなエンタテインメントは、他にはお笑いのライブくらいしか思いつかない。お笑いのライブでは、「面白い」か「面白くない」かがほとんどすべてである。「面白くないが考えさせられた」というような評価は失敗している証である。その芸人が好きだとか、その種類の笑いが好きだという価値は存在しているかもしれないが、最終的には「笑える」か「笑えない」かが、圧倒的に大きな基準である。〉(本書より)
 お化けと、お笑い。お化けの「怖い」か「怖くない」か。お笑いの「面白い」か「面白くない」か。その共通性はなんとなく怖い。〈お化け屋敷を始めて間もない頃、出口から笑って出てくるお客様を見て、私は演出が足りないのだと思っていた。お化け屋敷は、ひたすら怖くて、館内には悲鳴と絶叫が響き渡り、泣き出すお客様が続出する。そういうものが理想のお化け屋敷だと思い込んでいた(略)。〉それはお化け屋敷とは言えない。と著者は述べている。〈その「何か」とは、一体どんなものだろう〉と、いうのである。本書に解答が。ナットクするお化けも見たいものだ。







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