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評者◆竹原あき子
ガガーリンは『老人と海』を読んでいた
No.3114 ・ 2013年06月15日




 アレクセイ・レオーノフという名前を覚えていれば、かなりの宇宙ファンだろう。1965年、世界ではじめて宇宙遊泳をしたレオーノフの特別番組がフランスで放映された。話題の中心は、宇宙でも高所恐怖があるか、船外でめまいがするか、最後の30秒で酸素がなくなる危険があったという告白などだったが、彼が驚きを隠せなかったという思い出は先輩のガガーリンの姿だった。最初の宇宙飛行士候補20人に選ばれ、一緒に訓練した2人は親友だったという。レオーノフは1961年ガガーリンが出発直前に読書をしている姿をみた。近づけばヘミングウェイの『老人と海』が手にあった、という。なぜアメリカのヘミングウェイか、なぜ『老人と海』か、なぜ当時の敵国アメリカの本が入手できたのか、などの疑問を次々とくりだしながら、「命をかけた使命直前のガガーリンの姿は美しかった」、そして「ガガーリンは宇宙船の中でヘミングウェイの言葉を思い出していたのだろうか」と懐かしそうにしめくくった。レオーノフはもしかしたら、小説の最後にある〝孤独な老人はライオンの夢を見ながら(The old man was dreaming about the lions)〟を引用したかったのかもしれない。
 回復できないと悟っていた85歳の日本人男性が病院のベッドで読んでいた本は、同級生が見舞いに持ってきた『老人と海』だった、という話を聞いたことがある。『老人と海』とは、どんな文化を基盤にしていようと死を覚悟する男性に必読の書なのだろうか。
(和光大学名誉教授・工業デザイナー)







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